事業紹介

2013年
事業

340 日中海上航行安全対話

事業実施者 笹川平和財団 年数 1年継続事業の1年目(1/1)
形態 自主助成委託その他 事業費 12,004,591円
事業の概要

本事業の取り組みの背景と、日中で合同検討会を開くまでに至った経緯などについてご説明いたします。

背景

2012年9月の尖閣国有化に伴い、周辺海域において日中双方の法執行船が日常的に遭遇し、緊迫した状況が続いています。

一方または双方の実力行使により、船舶及び乗員の安全が損なわれる不慮の事態が万が一発生した場合、両国内のナショナリズムを刺激し、両国間の緊張が著しく高まり、既に悪化している日中関係に更なる打撃を与える恐れがあります。

このような不測事態を回避することが焦眉の急になっているにもかかわらず、政治関係悪化の影響を受け、海上航行安全をめぐる両国間の対話のチャンネルが閉ざされ、深刻な事態に対応できる手立てが見つかっておりません。

 

今回の合同検討会までの経緯

笹川平和財団・笹川日中友好基金は、日本と中国の間での安全保障分野における民間対話を長く実施してきた経験を有しており、尖閣をめぐる日中間の対立が激しさを増した2012年秋から、当該問題に関して、民間チャンネルを生かした日中対話の可能性について模索してまいりました。

2013年2月に、長年のカウンターパートである北京大学国際関係学院との間で、両国の法執行船と乗員の安全問題をテーマに対話を準備することについて合意がなり、日中両国の国際法、海洋法、紛争法、安全保障、海上警備、航行安全問題の学者・専門家による検討委員会の人選に取り掛かりました。

そして5月には、日中双方の関連機関や団体の専門家が、それぞれ個人の資格で委員会を結成し、それぞれの国内において最初の検討会を行いました。以来、月一回のペースで、両国において国内検討会議を開催してまいりました。

とくに、法執行船と乗員の安全問題について、法律の適用、危機管理、政策の解釈、コミュニケーション手段、信頼醸成措置などの角度から検討してまいりました。

 

「対話」のメンバー

日本側は、東京大学大学院法学政治学研究科中谷和弘教授(国際法)を座長に、大阪大学大学院、海洋政策研究財団、防衛研究所などにご所属の方々にご参加いただいております。

中国側は、北京大学国際関係学院朱鋒教授(Zhu Feng、国際関係学、東アジアの安全保障)を座長に、中国南海研究院、国家海洋局海洋発展戦略研究所、大連海事大学などにご所属の方々にご参加いただいております。

日中対話

「日中海上航行安全対話」事業では、これまで以下のような「対話」を実施し、その成果として日中共同での報告書をまとめるにいたりました。

第一回 日中合同検討会

2013年8月19日、東京都内 日本財団ビル内

 

第一回 日中合同検討会後の記者会見

2013年8月20日、東京都内 日本財団ビル内 

 

第二回 日中合同検討会

2013年10月20日、中国・北京市内 

 

第二回 日中合同検討会後の現地記者との懇談会

2013年10月21日、中国・北京市内

 

第三回 日中合同検討会

2014年1月26日、東京都内

 

第三回 日中合同検討会後の記者会見

2014年1月27日、東京都内 日本財団ビル内 

 

 

報告書と関連報道

2014年1月27日の記者会見で配布した資料をダウンロードいただけるようにいたしました。

報告書





今回は概要までの報告にとどまりましたが、さらに議論全体を網羅した報告書を準備中です。

関連報道

2014年1月27日の記者会見のようすは以下のメディアで報道されました。

日本語

■NHK 2014年1月27日ニュース 『日中「不測の事態回避は対話が重要」』

■毎日新聞 2014年1月28日『尖閣諸島周辺で衝突回避へ提言』

■しんぶん赤旗 2014年1月28日『尖閣問題で日中は対策を』

■海上保安新聞 2014年1月28日『危機管理・信頼醸成措置を 日中海上航行安全対話「尖閣」で共同提案』

■日本海事新聞 2014年1月28日『日中海上航行安全対話「相互理解が必要」両国メンバー会見』

中国語

■環球ネット: http://world.huanqiu.com/exclusive/2014-01/4797902.html

■百度ネット: http://bbs.eastday.com/forum.php?mod=viewthread&tid=1860924

ブルッキングス研究所のセミナー

2014年5月2日、アメリカのブルッキングス研究所で、このプロジェクトの報告を含めた、テーブルを囲んだセミナーが開催されました。

尖閣諸島周辺の不測の事態を未然に防ぐため、笹川平和財団笹川日中友好基金では、2013年8月から「日中海上航行安全対話」を開始いたしました。以来、半年の間ほぼ毎月、日中双方の国際法、海洋法、安全保障諸分野の専門家たちが、それぞれの国で検討会をつづけてまいりました。また、日中合同の検討会も3度開催いたしました。検討会では、当該海域での航行安全と危機管理措置について対話をし、危機的状況を制御し緩和していく方策に関して報告書をまとめました。

そして、その報告書の主旨について広く知れ渡るよう、ひとつのきっかけを意図して、2014年5月2日、アメリカのブルッキングス研究所でテーブルを囲んだセミナーが開催されました。




セミナーには、ワシントンに拠点を置くアメリカの代表的なシンクタンクの専門家や、大学で東アジアの安全保障を研究する学者らが集まりました。

まず司会のブルッキングス研究所のリチャード・ブッシュ上席研究員が主旨説明とメインゲストの紹介をし、つづいて笹川平和財団羽生次郎会長が報告書の英訳資料をもとに「日中海上航行安全対話」の背景や提言内容などについて説明しました。さらに、中国側メンバーの代表である北京大学朱鋒教授が中国側の立場からの主旨説明を行いました。

その後、45分間の質疑応答が行われ、列席者から活発に質問が出されました。たとえば、提言書に示された「信頼醸成措置」の参考となる事例の有無や、提言内容を政策に反映させるためのチャンネルをどう確保するか、などです。

また、コメントとして、もう一つのホットイシューである「空の安全」も射程に入れた包括的な対話が必要であることや、学術的検討だけではなく海上法執行の第一線の実務家を巻き込んだ対話が必要だという声もあがりました。

これらに対して、羽生会長と朱教授からは、日中の海上法執行機関同士の信頼醸成構築にはかつて実施された例がなく、今後さらに「対話」を通じてその方法を模索していきたいこと、そして、提案した内容が各方面から支持が得られれば、今後は空の問題も視野に入れていくつもりであることなどが述べられました。また、提言内容を実現するために、これからも全力を挙げて両国政府はじめ関係者に働きかけていく所存であると述べ、セミナーに参加した方々に協力を求めました。

2014年5月のシンポジウム

2014年5月29日に公開シンポジウム「東シナ海での危機回避に向けた日中対話の必要性 ―航行安全をめぐる日中民間対話の試み―」を開催しました。

2014年5月29日のプログラム(日本語)

2014年5月29日のプログラムは、以下をクリックしてください。PDFをダウンロードいただけます。

プログラムのダウンロード

報告書

本事業のこれまでの成果である「報告書」をご覧いただけます。

以下をクリックすると、PDFをダウンロードいただけます。

若干の修正がありました。(2014年5月28日更新)
いまダウンロードいただけるのは「2014年5月27日版」です。


シンポジウム開催

2014年5月29日午後、日本財団ビル2階でシンポジウム「東シナ海での危機回避に向けた日中対話の必要性」を開催しました。

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昨今の東シナ海及び南シナ海の緊迫した情勢に対する日本社会の高い関心を反映して、120名以上の参加者にお集まりいただけました。

シンポジウムでは、昨年度実施された「日中海上航行安全対話」事業について報告が行われ、同事業でまとめられた報告書(「日中海上航行安全対話報告書(日本語PDFダウンロード中文PDFダウンロード)」)をもとに意見が交わされました。

 

討議された内容

シンポジウムは二部に分かれて行われました。

第一部の冒頭では、対話に参加した日中双方の専門家委員を代表して、笹川平和財団の羽生次郎会長と北京大学の朱鋒教授が、事業の経緯、意義、成果と今後の課題について説明しました。

続いて、東京大学大学院の中谷和弘教授と中国南海研究院海洋法と政策研究センターの洪農主任が日本側及び中国側の法的問題と航行安全に関する見解について紹介し、それらについて大阪大学大学院の真山全教授にコメントいただきました。

第二部では、防衛研究所の飯田将史主任研究官と北京大学の于鉄軍准教授が日中双方の委員を代表し、報告書で提案された危機管理と信頼醸成措置の導入について説明し、桜美林大学の李恩民教授にコメントいただきました。

 

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笹川平和財団 羽生次郎会長 北京大学 朱鋒教授
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東京大学大学院 中谷和弘教授 中国南海研究院 洪農主任 大阪大学大学院 真山全教授
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防衛研究所 飯田将史主任研究官 北京大学 于鉄軍准教授 桜美林大学 李恩民教授

 

その後、第一部と第二部での報告内容をめぐって、会場の参列者のみなさんと活発な質疑応答が行われました。話題としてあがったのは、海洋安全を巡る情勢と日本政治の動き、国連海洋法条約の条文に対する解釈の違い、報告書に含まれる政策提言を両国政府に提出する具体的プロセスなどでした。

 

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この日中対話の事業は、2014年度事業「日中東シナ海安全対話」に継承されました。

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