Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第114号(2005.05.05発行)

第114号(2005.05.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻教授)◆山形俊男

◆礼文は花の島である。これから初夏にかけて、レブンソウやレブンアツモリソウなど島特有の美しい野草が咲き乱れることだろう。この島を散策した時に、一点だけとても残念だったことがある。それは島の南西部の名所<地蔵岩>付近に打ち上げられたゴミの山である。日本語、ロシア語、ハングル語などが書かれた様々なゴミがせっかくの美しい景観を台無しにしていた。

◆こうしたゴミはどこから来るのだろうか。日本や韓国では一人あたり一日に1kgくらいのゴミを出している。米国では2kgである。人間の活動から生まれる、こうしたゴミの一部は河川を経て、海に出る。沿岸部のゴミは容易に漂流し、さらに洋上で投棄されるゴミもある。ゴミは単に美観を損なうだけではない。生態系を乱し、地球環境を確実に劣化させている。そこで今号では海のゴミを特集した。

◆海流の専門家である久保田氏には衛星を活用したグローバルな視点から、海のゴミの漂流について解説していただいた。貿易風と偏西風からなる大規模な風系は地球の自転と相まって、太平洋のはるか南の海に浮遊ゴミを集積させるような流れを生み出す。北大西洋西部のサルガッソ海は船を捉えてしまう魔の海域として知られているが、同様の理由でホンダワラ(サルガッソ)が多く集積するためらしい。

◆齋藤氏には、まさに久保田氏の指摘するゴミの集積海域にある南鳥島から生々しい現場報告をいただいた。珊瑚礁の美しい海と海岸に漂着した多量のゴミの違和感は、北の海との違いはあれ、編集者が礼文島で受けた印象と同じものであろう。齋藤氏らのクリーンアップ作戦では実に四万人が一日に出すゴミの量を処理したことになる。

◆このようなクリーンアップ作戦を持続的に行うにはどうすればよいだろうか。金氏には韓国で進められている、海洋ゴミ買い取り制度について解説して頂いた。国、自治体、漁業関係者の三者が協力し合うメカニズムの導入は漁業に関係するゴミ対策に一つの有効な方向を示している。

◆日本国中どこをドライブしても目に入る光景は、路肩に捨てられたゴミ袋、空き缶、たばこの吸い殻である。こうした陸のゴミも海のゴミもその起源は人の心の中にある。齋藤氏が指摘するように幼少時から環境教育を充実させることが今もっとも望まれている。(了)

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