太平洋島諸国・国際政治講座

第1回バーチャルクラス「太平洋島嶼国と沖縄の関係」提出レポート

- 鳥羽 秀治 -
「Good Governanceにむけてのドナーの役割」

太平洋の島嶼国は一人あたりの援助受給額が世界で最も高い地域である。島嶼国が抱える様々な問題を克服するために地域間の協力体制がいくつかの分野で築かれたり、議論されてはいるが、それぞれの国が経済的自立をするまでの道は遠く、援助が国の発展には欠かせない状況も続いたままである。しかし、そもそも国の財政がその国の発展のために効果 的に使われているかは疑問である。島嶼国のような小さな国では民営化がなかなか進まず、あってもその規模は小さく、政府が経済的にも政治的にも絶大な力を持っており、閣僚や政府関係者による公費や政府の私物化、また利権をめぐっての賄賂をよく耳にする。富と名声を手にするには政府の重職につけばよいというのが世の常識になっている印象すら受ける。

こういった国々に対していかに効果的な援助するかということはとても困難な課題である。90年代になり、それまでの援助方法や不適切な条件付けの反省から、Good Governanceが途上国の経済発展のための基本条件、また援助支給の条件という考えが世銀やドナー国を通し広まっている。例えば、ここフィジーで頻繁に政府の不明確な財政や腐敗に関するニュースを目にすると、どうやらGood Governanceは太平洋の島嶼国でも早急に求められているのではという気がする。

Good Governanceの達成のためには政府の体制や体質の改革を意味する。しかし、これは一朝一夕で行なわれるものではない。かといって、Good Governanceが達成されるまで援助しなというのも途上国が抱える問題を深刻化させる恐れがある。また、例えば、そもそもどの程度民主主義が達成されたり、政府の透明性等が達成されてGood Governanceとみなされるのか。それらをはっきりとした数値で表わすことはできず、その判断も難しいところである。さらに太平洋島嶼国、特にメラネシアの国々は他と比べて伝統的な政治形態が今でも根強く、ドナー側の求めるGood Governaceで求められる要素が伝統的な統治法と相反することが多い。こうした状況下で必要だと思われるのは、まずドナー側は援助受給国に対し、強硬に条件や意見を押し付けないという姿勢、そして、受給国側は国全体の教育レベルの底上げを図るということに思われる。自然資源に恵まれず、主要産業の基盤が比較的弱い太平洋島嶼国にとって、人への投資や人間開発は国の発展には特に欠かせない要因である。一部の知識人や村の有力者の意見や考えを盲目的に受け入れる状況は健全な状況とは思えない。国民一人一人がより多くのことを知り、学び、その上で国の進むべき方向を自分達で判断し選ぶことができるようになる必要があると思う。この点についてドナー側が協力できることは島嶼国民の教育を受ける機会の増加や、教育の質の向上の手助けと考える。ただし、教育には時間がかかる。数年で教育部門における援助なり協力の成果を求めるのは早急である。教育については長い目でその過程なり成果を見ていくことがドナー側に求められていることに思われる。将来、太平洋島嶼国が経済的自立を達成できるかどうかは分からないが、その達成に向け自分もなんらかの形で協力し続けていけたらと思う。

講師 松島泰勝先生からのコメント

さて、小論文有り難う御座いました。
太平洋地域の島嶼経済について、的確に問題点を捉え、対策を示し、論理構成のしっかりした論文だと思いました。また、自らの研究の方向性と、島嶼経済を重ね合わせていることに強い問題意識を感じました。
鳥羽さんが指摘されるように、島嶼国は援助金への依存率が高く、政府部門が肥大化し、民間部門がなかなか育っておりません。その一因としてグッドガバナンスの問題があるとの指摘はその通りです。 構造調整政策により、グッドガバナンスを押し付けようとしても、島嶼国に根付かなかったり、かえって反発を生んでいるケースもあります。どの様に、島嶼民が内発的にグッとガバナンスを身に付けていくかというと、やはり人材育成、人間開発によるところが大きいと私も思います。援助のあり方としてもインフラに重点をおくのではなく、人間開発というソフトに比重を移すべきです。人間開発の成果 も長期的にしか明らかにならなず、また直接的な経済利益として目に見えにくい面 があり、援助を受け入れる国にとってもインフラの方を期待する向きがあります。しかし、島嶼国の経済自立にとり人材育成が最重要であることを、鳥羽さんのように太平洋島嶼国を理解する人々が各方面 で自らの見解を述べ、実際に活動することで、現状を変えることができるものと思います。また島嶼におけるグッドガバナンスの評価基準、島嶼社会との関係等、研究上においてもグッドガバナンスについて考察を深める必要があるでしょう。そして、この様な研究成果 は援助行政においても大きな役割を果たすことができるでしょう。
私の出身地である沖縄も太平洋島嶼国と同じく、補助金依存、失業問題、公的部門の肥大化という問題を抱えています。30年前に日本に復帰して、インフラに重点をおいた補助金政策によっては沖縄の経済自立が達成されませんでした。沖縄、太平洋島嶼国という島嶼における経済自立策のあり方がいま、厳しく問い直されています。
私自身は人間開発と共に、海洋と島との関係性を強化するような経済自立策に関心があります。島嶼という陸地に重点をおいた開発政策では、規模の不経済が生じやすいですが、海洋がもつダイナミズムを島嶼が活用できるような様々な方法を総体的に統合することで、経済自立へのもう一つの道となるのではないかと考えております。

[特別講座] 松島泰勝講師の特別講座(2001年9月)
  • 国際政治講座
  • 情報通信講座
  • 島嶼経済講座
  • ゼミ

このページのトップへ