太平洋島諸国・国際政治講座

第1回バーチャルクラス「太平洋島嶼国と沖縄の関係」提出レポート

- 早川 理恵子 -
「沖縄と太平洋を結ぶもの」

日本と太平洋島嶼国の関係を構築する際に東京を窓口にして発展性が望めないという印象を持っている。それは経済規模の違いだけでなく豊かさの価値観の絶対的な違いが見られるからだ。さらに言えば東京に住んで島を語る人々には一概に、島に対して「かわいそうな、助けてあげなければならない存在」と考える傾向が見える。確かに「離島苦」の問題は解決されなければならないが、過疎地、大都市それぞれ固有の問題を抱えており、「島」の問題がそれらに比べて特別 大きく扱われる理由は見当たらない。
豊かさの観点からすれば、少なくとも熱帯に位置する沖縄と太平洋島嶼国は、多くの資源に恵まれており、自給自足の生活をする限りでは豊かであると言えよう。逆に貨幣経済と物質文明がもたらされたことにより貧富の差が生まれ、島の、特に都市において多くの問題が発生している。JICAの太平洋島嶼国担当者とマーシャル諸島でたまたまはなす機会があった。その担当者は「島の人々に少なくともサンダルをはいてもらうのが私の目標です。」と語っていた。「裸足」であることと貧しいことがどのようにつながるのか? 日本に復帰し経済的に豊かになった沖縄の人々が「モノがなかった昔の方がずっと豊かだったような気がする」とつぶやくのを何度か聞いたことがある。パプアニューギニアのジャーナリストを沖縄の那覇に連れていった時のことだ。「この島は大変だ。こんなに物があふれており、外からの供給が断たれれば生きていけない。まだ私たちはいつでも山に入って自給自足に戻れる」と言われた時は、まさに目から鱗が落ちた思いであった。海に囲まれ、限られた人工と資源の閉じられた島嶼社会には固有の資源管理の理論があるはずである。東京と太平洋島嶼国を結んでもその糸口は見つけにくいであろう。日本の中の島嶼地域で同じ熱帯の環境にある沖縄と結ぶことで多くの解決策を見つける可能性に期待したい。それは小規模なまた数少ない解決策かも知れない。しかし、島嶼社会は大きな変化や外からの影響に脆弱であり、小さな変化が徐々に広がっていくこと、若しくは限られた場所で行われることの方が良いように思う。
その他に島嶼社会の資源管理は島固有の文化、コミュニティのあり方とも深くつながっている。古くから伝わる月の伝説と潮の干満に関連した漁のきまりはまさに環礁 の資源管理である。人々の政治への関り方も、100万人の人工の都市とは違う。4万の人口の八重山には発行部数1万のローカル紙がある。4人に1人の購読率は、島嶼社会の情報の流れがいかに濃いかを示している。
これらの島社会の文化的固有性も多くを太平洋と沖縄は共有している。両者を結ぶことで発見、再発見されるものも多いだろう。島嶼社会の発展は自然環境や人々の生活に与える影響を考えてもまさに「内発的」に行わなければならないと考える。

講師 松島泰勝先生からのコメント

御指摘の通り、豊かさの価値観において島社会には独自な物差しがあり、それ が将来における島嶼発展の可能性につながるのだと思います。「かわいそうだか ら、助けてあげる」のではなく、共に学び合うという観点から島と島との協力関 係が形成されていくのだと考えます。沖縄以外の他の日本列島も島により構成さ れており、日本の文化や意識の底を掘り起こせば、太平洋の島々とも交流できる 共通点は、存在していると思います。日本人が島人(シマンチュウ)であること を自覚して、自らの問題として太平洋島嶼に向き合う必要があるでしょう。
早川さんは太平洋島嶼と沖縄との人的交流を長年に渡って行ってきました。それは両島嶼の政治経済的、社会的、文化的な類似性を深く理解し、その類似性を テコにして、島人の建前ではない、本質的な交流を目指そうとされているのだと思います。また、早川さんは、沖縄の中でも、特に宮古、八重山の先島と、太平 洋島嶼との交流に力点を置いております。人口規模、島の伝統や文化の深さ、そして、小島の起動力の良さ等が両島嶼を更に近づけていると考えます。東京、大 阪等の大都市だけでなく、沖縄という日本文化のもう一つの側面を太平洋島嶼の方が知ることにより、日本に対するイメージも変わってくるでしょう。経済大国 としてだけでなく、島人が住む、自らに近い存在としての日本のイメージです。
島の発展も、島人が主体となり、島の文化や伝統を拠り所にした内発的なものとなる必要があるとのお考えにも、小生は同意します。近刊『沖縄島嶼経済史ー 12世紀〜現在』でも、約900年という歴史の中において、島嶼沖縄における 内発的発展と、海洋ネットワークのあり方について考えました。 今後とも、太平洋島嶼と沖縄との交流事業がさらに発展することを祈願します。

[特別講座] 松島泰勝講師の特別講座(2001年9月)
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