太平洋島諸国・国際政治講座

【第1回講座】グローバル化時代における太平洋島嶼国と日本の新たな関係

4.太平洋島嶼国を世界と結びつける方法
(1)グローバル・アジェンダとしての島嶼国問題

島嶼国を脅かす地球温暖化と海面上昇の問題は、国際社会全体が直面 するグローバル・アジェンダの一環として島嶼国支援を捉える必要があることを示している。この意味では、「日米コモン・アジェンダ:地球的展望に立った協力のための共通 課題」(1993年7月)が優れた例を提供している。このアジェンダでは、国際珊瑚礁 イニシアチブ(ICRI)との関連でパラオ政府を支援して同地に珊瑚礁 保全研究センターを設立する計画が取り上げられている。また、中南米とカリブ海諸国を対象地域とする「危機に瀕する公園」という計画も触れられている。カリブ地域に対する米国の関心と、太平洋地域に対する日本の関心を結びつけた日米協力により、こうした島嶼国支援体制を今後いっそう発展させていくべきだろう。
APECでも、1993年初めに始動したアジア太平洋環境会議(エコアジア)に見られるように、環境問題に対する地域的な取組みが芽生えつつある。APECでは環境閣僚会議を開き、APECビジョン声明やAPECにおける経済と環境を両立させるための枠組み原則など、環境に関するいくつかの声明を採択している。SPFの代表者も、こうしたAPECの環境会議にオブザーバーとして出席している。太平洋島嶼国は、個々の資格において、またSPF、SPREP、SOPACなどを通 じて、環境保全を目的としたこのような地域協力への重要な参加者となり得る(註8)。

(2)域外諸国の島嶼国支援

カリブ海諸国との比較からも明らかなように、もうひとつの重要な問題は、島嶼国間の地域的協力体制と、域外諸国の島嶼国支援体制とをどう組み合わせるかである。カリブ海の場合は、英国、フランス、オランダなど西欧諸国との歴史的なつながりが依然として重要である。この点では、最近合意されたロメ協定の更新が注目される。太平洋地域の場合、同じくロメ協定の対象であるものの、西欧の旧宗主国との関係はカリブ海諸国より弱いようであり(ただし、フィジーがロメ協定の砂糖議定書を重視しているのは十分な理由がある)、それに代わってオーストラリアとニュージーランドが大きな役割を担っている。
  太平洋の島嶼国と事業体のほとんどにオーストラリアとニュージーランドへの優遇的なアクセスを与えるスパルテカ(南太平洋地域貿易経済協定)がこの良い例である。カリブ海では、米国とカナダが域外出資国としてカリブ開発銀行(CDB)で重要な役割を果 たしているが、太平洋でその役割を果たすのは日本であろう。環太平洋先進5カ国(米国、日本、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ)は、太平洋島嶼国に対する国際支援体制の中心となるべきであり、日本はそのためのイニシアチブを取ることができる。
  カリブ開発銀行に匹敵するような太平洋島嶼国だけを対象とした国際開発機関は存在せず、新たに設立するのも難しいと思われるが、アジア開発銀行(ADB)にはこうしたニーズに対応する機能があるので、その機能を強化するのが最善の策であろう。この場合、アジア開発銀行は、カリブ開発銀行の専門家が原則として域内から採用されていることを参考にして、太平洋島嶼国出身の開発専門家を養成し、いずれ各国に配置することを目指すべきだろう。そうすれば、経済政策で域外の専門家に依存する度合いが低くなるからである。国際的な開発銀行が果 たす役割は単に財政的な支援だけではなく、能力の開発も含まれるのである。

(3)太平洋島嶼国問題の「アジア化」

カリブ海の場合は、中南米の大国としてベネズエラが果たしている役割に注目すべきである。現在のところ、アジア太平洋地域でベネズエラに匹敵する国を見つけるのは難しい。地理的な条件や経済規模からすると、理論的にはインドネシアがそれに当たるはずだが、当面 の政治的・経済的混乱が収拾するまでは、この国にあまり多くは期待できない。

西イリアン問題などパプアニューギニアとの間で未解決のままにされている問題も、インドネシアと太平洋島嶼国との関係発展の障害になる可能性がある。マレーシアは、太平洋島嶼国の森林資源に対する関心から、いくつかの太平洋島嶼国に駐在代表部を置いている。ASEAN諸国の中ではフィリピンも候補国であり、今後は太平洋島嶼国の問題に深く関与するようになる可能性がある。
いずれにしても、一時的な後退を余儀なくされたとはいえ、長期的には、東アジアの経済が再び軌道に乗った時点で、東アジア諸国の多くを太平洋島嶼国への支援体制の中に組み込むという構想を今から立てた上で21世紀に臨むべきであろう。PECCやAPECがアジェンダのひとつとして太平洋島嶼国問題を真剣に取上げる日も、いつかは来るだろう。

註8:Yoko Ogashiwa, "The Pacific Island Countries in Asia-Pacific Regional Framework----Retrospect and Prospect", Hiroshima Peace Science, No.20 (1997), p.347.
【第1回講座】グローバル化時代における太平洋島嶼国と日本の新たな関係
  • 国際政治講座
  • 情報通信講座
  • 島嶼経済講座
  • ゼミ

このページのトップへ