太平洋島諸国・国際政治講座

【第1回講座】グローバル化時代における太平洋島嶼国と日本の新たな関係

- 渡邉 昭夫 - 青山学院大学教授 PIN委員会、JANCPECC主査(註1)
1.はじめに

1989年は、世界政治の構造的な変化を示す重要な出来事が多数発生した年であった。その最たるものは、東西ベルリンを分断していた壁の崩壊であり、米ソ首脳のマルタ会談である。また、中国では北京の民主化運動が人民解放軍によって武力制圧されるという事件もあった。中東地域でも秩序が悪化し始め、やがて数ヶ月後にはイラクのサダム・フセインによるクウェート侵攻をみることになる。

今から振り返ってみると、これらの出来事はその後の10年間に起きた国際関係の変化を象徴しているようである。太平洋島嶼国(PIN)をめぐる国際情勢もこのような大きな変化に影響されずにはすまなかった。特に重要な変化は、こうした島嶼国にも経済と文化のグローバリゼーションの波が押し寄せ始めたことである。経済活動や文化活動の中心地から遠く離れ、国そのものが小さいことから、PINは他のどこよりも大きなチャレンジに直面 しているが、先進諸国はこうした遠隔地にある小さな島国には充分な注意を払っていないようである。

もう一つ注意すべきは、グローバリゼーションを特徴とする新しい世紀への移行の過程で、先進国自身も様々な調整に迫られていることである。金融の混乱、経済問題、急速に高齢化する人口問題などを抱える日本も例外ではない。このような状況の中で、日本政府は、過去数10年間の予算決定の政治では「聖域」と見なされてきた政府開発援助(ODA)や安全保障などの予算を削減する方向で、全般 的な政策の見直しを余儀なくされている。こうした国内外の背景に基づき、太平洋島嶼国の将来を新たな角度から検討して、21世紀のPIN政策を見直すことが必要になってきている。

註1:PECC(太平洋経済協力会議)は、日本の大平首相が提唱し、オーストラリアのジョン・マルコム・フレーザー首相との協力のもとに1990年に設立された。太平洋島嶼国は、SPFのフォーラム事務局を通 してグループとしてこれに参加している。PECCにはいくつかのタスクフォースがあり、そのひとつがPIN(太平洋島嶼国)タスクフォースである。日本はPIN、PECCのコーディネーティング・メンバーである。
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