Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第373号(2016.02.20 発行)

"さかな"の魅力を伝える、おさかなマイスターとは!?

[KEYWORDS] おさかなマイスター/魚食普及/出前授業
日本おさかなマイスター協会事務局長◆大森良美

魚介類に関する幅広い知識を持ち、魚介類の素晴らしさを伝える「おさかなマイスター」は、魚食普及のために水産業界が立ち上げた制度です。
正しい情報を消費者へ伝えることをモットーに、いまでは、小中学生を対象にした魚を食べるための普及活動に力を注いでいます。

おさかなマイスターの誕生

■おさかなマイスターの認定証

■おさかなマイスターコースの講義風景

「世界の築地でさかなを学ぶ」、これはおさかなマイスターを始めた時のキャッチフレーズです。おさかなマイスターは、①消費者に水産物の知識を高めてもらい、水産物に興味を持ってもらう、②水産物に関し、幅広い知識を有する者を育成し、正しい情報を消費者に伝える、③水産業界全体が一丸となって取り組むことで健全な魚食普及・食育を目指す、以上のことを目的に始まりました。
つまり、"さかな"に関するさまざまな知識を学ぶ場を作り、古くから日本人が大切にしてきた魚食文化を学んでもらい、魚の素晴らしさを伝える伝道師(おさかなマイスター)を育てることです。おさかなマイスターは、生産者・流通業者と消費者を結ぶ橋渡し的存在です。そしてその場所は、世界に名だたる魚市場である築地(東京都中央卸売市場築地市場)がふさわしいと、2007年7月、日本おさかなマイスター協会は築地で産声を上げました。
おさかなマイスターには、誰でも受講できる「おさかなマイスターアドバイザー」と、水産業界または調理・飲食業界で2年以上の経験者が受講できる「おさかなマイスター」の2つのコースがあります。どちらも講義を受け、修了試験に合格しないと認定を受けることができません。この資格は、日本おさかなマイスター協会が認定する民間の資格で、日本おさかなマイスター協会は、一般財団法人水産物市場改善協会、一般社団法人大日本水産会、全国漁業協同組合連合会の三者で運営しています。事務局は水産物市場改善協会のなかにあり、同協会は築地市場で水産物の啓発普及事業を行っています。
講義は、受講期間が3~4カ月間にわたり、魚介類の知識、漁業、食品衛生、栄養、水産流通、調理法など、"さかな"をいろいろな角度から学びます。おさかなマイスターコースでは全22講義(44時間)、おさかなマイスターアドバイザーコースでは全11講義(22時間)を受講します。なかでも特にこだわっているのが正しい知識(情報)の伝達です。魚介類の知識(魚類から軟体動物、甲殻類、棘皮動物のほか、加工食品に至るまで)をはじめ、大学の教授などが科学的根拠に基づいた内容の講義を行います。
現在、非常に多くの情報があふれており、またそれを、私たちは容易に受け取ることができます。ただ残念ながら、行き交う情報が正しいとは限らず、なかには誤った情報も見受けられます。消費者に役立ててほしい魚食のための"さかな"の正確な情報を伝えたい─、この思いも強く、特に正しい情報の伝達には力を注いでいます。
2016年1月現在、認定者は、おさかなマイスターとおさかなマイスターアドバイザーをあわせて、のべ約550人です。講義の内容から、認定者は水産業界や飲食業界に従事している方が大半を占めますが、水産業界とは無縁の仕事をしている方なども少なくありません。

食育出前授業「魚には骨がある」

■小学校での食育出前授業の様子

魚食普及活動も視野に入れて取り組んでいるおさかなマイスターですが、現在、活動の中心になっているのが小中学校での食育出前授業「魚には骨がある~魚を丸ごと知って食べよう~」です。おさかなマイスターやおさかなマイスターアドバイザーが講師となり、学校へ行き、特別に授業をさせてもらっています。
子どもが魚料理を嫌う一番の理由は「骨がある」(「水産物を中心とした消費に関する調査」平成20年、大日本水産会)ことです。魚に骨があることは、誰もが知っている事実ですが、この「魚の骨」が、子どもをはじめ、魚を敬遠する最大の理由になっています。同時に、魚料理に関する要望・考えでは「骨を気にしなくても食べられる魚料理」を望む声が多くありました。現在では、魚の骨を取った加工品が多く出回るようになっていますが、魚食の頻度をあげるために、骨を気にしなくても食べられる商品や料理を普及していけばよいとは私たちは考えていません。
骨は魚だけではなく、私たち人間をはじめ、動物には欠くことのできないものです。この「魚には骨がある~魚を丸ごと知って食べよう~」では、魚の骨の仕組みを人間の体との比較を交えながら教え、魚の骨に興味を持たせ、どこに骨があるのかを理解したうえで、魚を上手に、美味しく食べる方法を教えています。骨を排除するのではなく、魚を丸ごと理解してもらい、骨を含めた美味しさを知ってもらうことを、授業のねらいとしています。
授業では魚の栄養や生産量や消費量、旬などについて説明した後、魚類からほ乳類までの進化の話もします。そして、マアジの骨格図を使い、ヒレと骨の場所を説明し、特に食べる時に注意が必要な「ヒレを支える骨」、「肉間骨(背側と腹側の筋肉の間にある小さい骨)」を教えています。授業を受けた児童(生徒)は、学校の協力を得て、給食で実際に丸1尾のマアジの塩焼きを食べます。
上手に食べる子どももいますが、はじめて塩焼きを食べる子、箸が上手に使えない子、魚嫌いの子など様々です。平均して、1クラス30人前後の子どもたちと向き合いますが、子どもは魚が好きだ、と授業を行うたびに実感しています。それは食べ慣れている子どもだけでなく、初めて塩焼きを食べる子ども、はじめて骨のある魚を食べる子どもも同様です。

さかなの魅力を繰りかえし伝えることの大切さ

「魚離れ」は水産業界にとって最大の悩みです。一般社会でもここ数年、「魚離れ」という言葉が特に聞かれるようになりました。以前から、業界はそれを危惧し、いろいろな方法で魚食普及活動を続けてきましたが、なかなか実を結んでいないのが現状ではないでしょうか。私たちの出前授業も、その効果の検証には難しいものがあります。しかし、給食での実食、2~3カ月後に再度行ういくつかの学校でのアンケート結果からは、わずかながら家庭での魚料理の増加が窺えます。魚食普及活動は継続して行うことが何よりも大切であり、出前授業も例外ではありません。「魚って美味しいね」という子どもの笑顔を糧に、私たちはこれからも出前授業を続けていきたいと考えています。(了)

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