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中露主導の国際組織へ「実践的な一歩」か 中国新興企業が北極航路の商業利用拡大

北極サークル総会開幕 北欧アイスランドで

笹川平和財団 岡田美月


2026.10.09
6分
北極サークル総会のセッションに登壇する笹川平和財団の大塚夏彦上席フェロー(中央)=8日、レイキャビク(岡田美月撮影)

北極サークル総会のセッションに登壇する笹川平和財団の大塚夏彦上席フェロー(中央)=8日、レイキャビク(岡田美月撮影)

 北欧アイスランドの首都レイキャビクで国際会議「北極サークル」総会が開幕し、笹川平和財団上席フェローで北海道立オホーツク流氷科学センター所長の大塚夏彦氏が8日、関連セッションに登壇しました。大塚氏は北極航路の活用を巡り中国とロシアが結びつきを強めているとした上で、ロシアが提案する北極圏に関する新たな国際的枠組みが国際社会に与える影響について言及しました。
 

中国新興海運に「相当規模の貨物需要」

 大塚氏はセッションで、中国が「北極航路における主要な勢力になりつつある」と述べました。2022年に設立された中国のコンテナ船輸送会社「新新海運」を例示し、当初はロシア向けの海上輸送を中心に扱っていたところ、最近は北極航路を経由する欧州向けの輸出を徐々に拡大しつつあると強調しました。新興企業である新新海運が北極航路を商業利用する際の事業リスクを負うことができるのは、「北極航路を利用する相当規模の貨物需要を見込むことができる」ためだとも述べました。背景には、同社の親会社が中国国内にある中国の輸出企業と、欧州域内にある中国の輸入企業双方からの貨物を扱っている可能性があると指摘しました。
北極サークル総会で挨拶するアイスランドのグリムソン元大統領=8日、レイキャビク(岡田美月撮影)

北極サークル総会で挨拶するアイスランドのグリムソン元大統領=8日、レイキャビク(岡田美月撮影)

 またこれらの貨物は、他国の国際海運大手との間での価格競争にさらされることもない可能性に言及しました。これとは対照的な立場にあるのが日本や韓国などの海運業界です。大塚氏はロシアを巡る地政学リスクを念頭に、日韓などの国際海運企業では、それぞれの自国において、ロシア沿岸を通る北極航路の利用を許容する荷主を見つけることは「容易ではない」と指摘しました。
 運賃についても、超大型コンテナ船がスエズ運河を経由するのにかかるコンテナ輸送運賃の相場と比較して、より安価に設定することは困難だろうと述べました。また大塚氏は、ロシアは貨物量の拡大に向けた目標が過大であることに加え、ウクライナ進攻で国際市場から拒絶されたことなどが影響し、北極航路開発に苦戦している中、中国による海運利用の拡大がロシアには追い風となっていると語りました。その上で、国際海運では、多国間の連携組織が出来上がることは自然な動きであり、中露が海運事業分野で2国間連携を強化すること自体は問題ないとの考えを示しました。

北極7カ国と露主導グループの二極化に懸念

北極サークル総会のセッションに参加する当財団の大塚夏彦上席フェロー(右から3人目)=8日、レイキャビク(岡田美月撮影)

北極サークル総会のセッションに参加する当財団の大塚夏彦上席フェロー(右から3人目)=8日、レイキャビク(岡田美月撮影)

 しかし、今年9月にロシアで開かれた国際会議で、ロシアは北極8カ国でつくる「北極評議会」(事務局・ノルウェー)のうち、対露制裁を続けるメンバー国に対抗し、北極圏に関する新たな国際的枠組みを提案したとして、「北極7カ国」のグループと、ロシアとロシアに同調する非北極圏国によるグループの二極化を招くきっかけになる可能性を指摘しました。
 「北極7カ国」とは、北極評議会を構成する米国、カナダ、デンマーク、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアの8カ国のうち、ロシアを除いた7カ国のことを指し、いずれも北大西洋条約機構(NATO)加盟国です。北極圏のNATO加盟国とロシア主導のグループという対立構造が深まることを懸念した形です。
 現時点では、北極評議会など北極圏を巡る既存の組織に対抗する新たな国際組織の立ち上げは「不確実な構想段階」(大塚氏)にあるとみられています。ただ、大塚氏は、中露の北極航路分野での協力は実際的かつ具体的であることから、ロシア主導の国際組織づくりに向けた「実践的な一歩」として評価される可能性があると述べました。(笹川平和財団 岡田美月)
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