(会長メッセージ)
新型コロナウィルス感染症の拡大に関する当財団の対応について
ー「コロナ後」の日本と世界の変化を見据えてー

 笹川平和財団会長の田中伸男です。皆さん、コロナ危機の中、どのようにお過ごしでしょうか? わたしも政府及び東京都の外出自粛要請に従い、すでに一カ月ほど在宅勤務を続けております。このビデオも自宅でiPadを使って収録しました。

 まず新型コロナウイルスの感染により亡くなった方々のご冥福をお祈りいたします。そして感染者を一人でも多く救おうと日夜不眠不休の努力を続けておられる医療関係者の皆様に、心から感謝申し上げるとともに、エールを送りたいと思います。

 私どもの親元であります日本財団はお台場に1200床、筑波に9000床の軽傷の感染者用施設をそれぞれ提供する計画を発表いたしました。医師や看護師の宿泊、休憩場所なども設置する計画は内外の医療関係者から高く評価されていると聞き、我が国の緊急事態を乗り切るために官民挙げて一致団結し、そのリーダーシップを発揮していることに誇りを覚えます。

 さて私ども笹川平和財団はこの国難にあたって何をすべきでしょうか。先日役員、職員の皆様とともにビデオ会議を行ないました。
 まずは感染拡大を抑えるため国や東京都が要請している外出禁止を出来る限り守り、在宅勤務を続けることであります。当財団では2月27日に在宅勤務、海外出張の禁止、国内出張及び会議、会合の自粛を決定し、職員に通達致しました。世界保健機関(WHO)によるパンデミック表明、各国における非常事態宣言にもかかわらず、欧米において爆発的に感染が拡大したのに対し、我が日本国での感染は、クルーズ船における感染拡大がありましたが、比較的小康を保っており、少ない死者数となっていました。しかしながら、ここ数週間の感染者数の急増を受けた日本政府の七都府県への緊急事態宣言発令、さらに全国への拡大とオーバーシュートへのリスクは残念ながら未だ解消されておりません。私たち個人個人が今ここでさらなる大胆な行動を、首都圏においても日本においても起こさなければ、東京のロックダウンすらも考えられるという非常事態です。

 4月は新年度に向けて新たに事業を始めるという希望あふれる月のはずですが、その延期や中止、出張や招聘の中止やむなしの事態に至ったことは、平和交流事業を行う財団として、職員皆とともに正に断腸の思いであります。

 しかしコロナ騒ぎの中でも世界は進化しています。むしろこれをきっかけとしてIT化やテレワークが進みそうです。当財団でもスカイプビジネスを使って、Web会議を開き議論する環境ができています。理事会、評議員会はペーパーレスが可能になりました。稟議書の決裁については、電子決裁システムを3月16日から導入しています。加えて、出張報告については25日より電子決裁システムが導入され、各段に便利になりました。

 私はロックダウンの中にあるニューヨークのコロンビア大学やワシントン、日本は早稲田大学やGRIPS、アジアではインド、中国などをネットでつなぐWebセミナーに参加しました。 世界中のシンクタンクがWebでつなぐセミナー、いわゆるWebinarを毎日のように開くようになりました。また世界中の大学でWeb講義が始まっています 。当財団でもまもなくWebを使い外部の人たちとも会議をし、発信ができるようにいたします。 

 感染と闘う主要国のリーダーがすでに表明しているように、コロナとの戦いはまさに「戦争」です。各国の国内経済が深刻な打撃を受けているだけでなく、結果としてこれまで築いてきたグローバルなヒトの移動が事実上ストップし、その結果、グローバルな企業活動にも大きな影響が生じています。国際通貨基金(IMF)は1929年の大恐慌以来の経済危機だと言っています。エネルギーの世界で最も影響を受けるのは輸送部門に依存する石油です。国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、4月の石油需要が日量2900万バレル(世界需要の約三割)減少し、石油市場にとって歴史的なBlack April(暗黒の4月)だと言います。サウジアラビアとロシアが生産削減に合意できなかったため、石油の値段も半分以下に下がりました。しかし米国の仲介で「OPECプラス」とG20はなんとか石油生産削減の合意に至りました。とりあえず国際協力の勝利と言えると思います。

 このような時こそ、国際協力が重要だと思います。各国政府が国内対策に翻弄される中、国際機関WHOは今こそリーダーシップを発揮すべきですし、世界の国々はマスクや人工呼吸器の奪い合いをやめて、コロナウィルスの拡散を防ぐために団結すべきでしょう。また、いずれコロナは収束します。国内対策が落ち着いた国から、当面は医療分野で二国間や多国間のリーダーシップを取るべきでしょう。日本政府はWHOなど6つの国際機関を通じた155億円規模の緊急支援を行うことを決めました。また抗インフルエンザ薬アビガンの無償供与も検討していると聞いております。アジア諸国はコロナ被害を欧米諸国に比べてよく抑えていると言われていますが、当財団もアジアとの対話をミッションとして活動しており、ともに何ができるのかコロナ危機の経験の共有を行なってまいります。

 また、この状況がいつまで続くのかも不透明です。いずれにせよ、医療面や経済面のみならず、多くの分野でコロナは深刻な影響を及ぼしています。コロナの後は世界が、社会が変わってしまうかもしれない。先程の石油を例に取れば、人々のSocial Distancingの態度が続き自宅からテレワークする人は通勤しなくなり、学校もWeb授業、物を買うのもテレショッピングで自動車輸送は激減。国際会議もWeb上で行われ航空機需要は大幅に落ちたままになる。将来から振り返ってみれば、世界の石油需要は2019年がピークになっているかもしれません。さらに、コロナは米中覇権争いを通じて世界秩序を変える可能性が高い。コロナウイルスを「チャイナウイルス」と呼ぶトランプ大統領は、中国叩きを収めるつもりはないようです。中国は、ウイルスは米国製かもしれないと米国を批判しつつ、困っている国にはマスクや医療機器を援助し、初動の失敗を挽回しようとしています。米中両陣営の批判合戦はエスカレートし、今や世界中を巻き込む勢いに見えます。今年50年目の節目にあたる核不拡散条約(NPT)見直し会合はコロナのため延期されました。

 世界の大きな地政学的変化の中で日本が果たすべき新たな役割は何なのか、当財団は安全保障を大きなミッションとして活動しておりますが、今こそ新しい現実(New Normal)にどう対処するかの処方箋が求められています。笹川平和財団でも、国際研究ネットワーク(IINA)やチャイナオブザーバー、アメリカ現状モニター等のサイトを使って、内外の研究者が積極的に発言をしておりますので、ぜひご参照ください。

 海洋政策研究では海の環境ガバナンスを研究して参りましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、私たちは持続可能な社会を目指していく上で、より一層の英知と行動を結集していくことが求められています。米海軍の空母でのコロナ感染を見れば、海洋に係わるさまざまな活動にも大きな影響を及ぼし、私たちが海洋とどう向き合っていくのかを改めて問いかけています。世界は海でつながっています。いま世界は歴史的な困難に立ち向かっていますが、今こそ全人類が協力して乗り越えることが重要です。
BC(Before Corona)とAC(After Corona)といって、コロナウイルスの前と後では世界は変わってしまうと、米紙ニューヨークタイムズのコラムニスト、トーマス・フリードマン氏は言います。グローバル化がパンデミックを引き起こしたわけですから、もはやグローバル化の終焉がきたのか、またコロナが落ち着けば元に戻るのか。グローバル企業も生き延びるか死ぬかの選択を迫られているようにも見えます。カート・キャンベル元米国務次官補と、米ブルッキングス研究所のラッシュ・ドッシ氏 は米外交誌フォーリン・アフェアーズで、コロナが米国の覇権の終焉、英帝国にとってのスエズ動乱の契機になることを心配しています。「サピエンス全史」の著者で歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏は「人類はいま、世界的な危機に直面している。私たちは特に重要な2つの選択に直面している。1つは『全体主義的な監視』と『市民のエンパワーメント』のどちらを選ぶのか。もう1つは『国家主義的な孤立』と『世界の結束』のいずれを選ぶのか、だ」と言います。わたしは自分が国際機関にいた経験から答えは明らかであり、各個人が自ら立ち上がり国際協力を通じて家族を、社会を、そして世界を守るしかないと考えます。人類がコロナの経験をシェアして共通のアクションを取るしか平和の出口はありません。これこそが笹川「平和」財団の使命であろうかと思います。

 最近のフォーブス誌によれば、感染症対策に成功している国には女性がリーダーの国が多いといいます。ドイツ、台湾、ニュージーランド、アイスランド、デンマーク、フィンランド、ノルウェーなど女性の首相や大統領がパワーを発揮しています。笹川平和財団は女性のエンパワーメント事業を一つの柱としております。例えばアジア女性起業家支援のファンド100億円を立ち上げました。またイラン女性省との女性起業家支援事業もそのひとつです。エブテカール副大統領がイラン側の担当者ですが、彼女がコロナウイルスに感染したと聞いて心配しておりました。回復され職場に復帰されたと聞いて喜んでおります。彼女が回復され強いリーダーシップを発揮されて、イランのコロナ克服に成功されることを期待したいと思います。イラン女性起業家比較報告書によると、両国の女性起業家の数は年々増加しており、ここでも女性のパワーが発揮されていることが確認されています。イラン社会における女性の革新的な力を世界に知っていただくために、この報告書は大変貴重なものだと思います。当財団では中期目標に、ジェンダー平等のための目標設定を上げています。同じフォーブス誌は、コロナウイルスが(男性に比べて)女性にはるかに大きな経済的負担をもたらしている山のような証拠があると言っています。コロナ危機こそ企業や財団がジェンダー平等への決意の固さを試していると思います。

 皆さんの中には違う答えをお持ちの方がいるかもしれません。ぜひWebでセミナーを開き皆さんと議論したいですね。一人で自宅に待機していても良い答えは出てきません。 

 最後に当財団は常に職員とその家族の安全と健康を守ることを第一に考えつつ、公益財団法人として政府並びに自治体の方針に協力し、日本社会そして世界の安全と平和に貢献することを使命にしているとわたしは考えます。安倍総理が言うように、この戦いは長期戦になるかもしれません。皆で頭を活性化し、Webを使い、それぞれ在宅勤務を続けながらも一致団結してコロナウイルスに打ち勝ちましょう。

2020年4月21日
公益財団法人笹川平和財団

会長 田中 伸男

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