No.0051

2017年10月31日

イランの陶磁器「ラスター彩」が繋いだ友好関係 アラグチ次官の幸兵衛窯訪問 さらなる文化交流に意欲

笹川平和財団は、2017年8月に、イランのセイエッド・アッバス・アラグチ外務省事務次官(法務・国際問題担当)をお招きしました。アラグチ氏は、2013年に外務次官に就任後、2015年のイランの歴史的核合意の立役者として国内外の注目を集める実力者です。 卓男縮小.jpg駐日イラン大使として赴任中に(2008~2011年)、その昔ペルシャの華と呼ばれ、17世紀以降完全に途絶えてしまった幻の古陶「ラスター彩」の技術を復元した日本人陶芸家がいることを知ります。復元したのは、1804年に岐阜県多治見市に開窯した「幸兵衛窯」の6代目、人間国宝の加藤卓男氏。15年の歳月を費やしラスター彩を再現し、2005年に87歳で亡くなりました。現在の7代目加藤幸兵衛氏は、卓男氏の長男で、ラスター彩の技法を受け継ぎ、日本でさらに発展させることに情熱をかける陶芸家です。アラグチ氏は夫人とともに、2008年5月に幸兵衛窯を初めて訪問し、そこから、アラグチ氏と7代目加藤幸兵衛氏の交流が始まりました。 案内中縮小.jpg2012年に加藤氏が初めてイランを訪問、2013年にイラン国立博物館で「大ラスター彩展~古代から現代まで」を開催しました。陶芸を通じて日本とイランの文化交流促進に貢献している加藤幸兵衛氏を、来日日程の最終日にアラグチ氏が訪問しました。9年ぶりの幸兵衛窯訪問を喜ぶアラグチ次官にお話しをうかがいました。

インタビュー要約:

―アラグチ次官にとっては2回目の幸兵衛窯訪問でしたが、印象はいかがでしたか?

<アラグチ次官>

加藤幸兵衛先生のラスター彩はイランと日本の文化交流のシンボルだと思っています。 第1回目の訪問の時と同様、創作に関しての強い情熱を感じました。幸兵衛先生ご自身、2008年の私の最初の訪問がきっかけとなり、何度かイランを訪れており、2人のイラン人の陶芸家が幸兵衛先生のところでトレーニングを受けました。そういった交流の経験を通して、幸兵衛先生はさらにラスター彩への愛着が増していると感じ、非常に嬉しかったです。

亮太郎縮小.jpgまた、息子さんの亮太郎さんという優れた跡継ぎがおられて大変頼もしいですね。亮太郎さんは新婚旅行にもイランを訪れ、その時にも私はお会いしました。おじいさんの卓男さん、お父さんの幸兵衛さんが築かれた道をしっかり継承され、立派な陶芸家として成功されると信じています。




―今回は、実際にラスター彩の絵付けにも挑戦されましたね。


<アラグチ次官>
絵付け縮小.jpg

大変楽しかったです。しかし実際に絵付けをやってみると、いかに大変なことかもわかりました。私は「慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において」と描き、自分の名前も入れました。家の壁にかけて、今回の訪問を忘れないようにしたいと思います。


―人と人との交流は国と国の外交関係を維持する上でも非常に大切ですね。


<アラグチ次官 >

人と人との交流は、外交関係の基礎です。より良い生活と安全を保障するためにまず政治・経済・安全保障関係を耕さなければなりません。そのためには、お互いを理解することが必要です。相互理解を深めるためには、文化・芸術交流が非常に効果的です。世界中の紛争の源はごく小さな誤解やお互いの理解不足から生まれます。それを是正するためには、異文化や、宗教の違いを越えた文化・芸術交流により、人と人が出会い、お互いを理解しあうことが大変有効だと思っています。そういう意味でも、加藤幸兵衛先生は大変重要な方です。イランと日本の架け橋の象徴です。日本のイラン大使館や、イラン外務省でもこれからも幸兵衛先生のお仕事をサポートしてまいります

―3度目の幸兵衛窯訪問はいつになりますか?

<アラグチ次官>

1回目と2回目の間が9年もあきましたからね。次回、3回目はそんなに長く間をあけないで伺いたいですね。しかし、私は外交官ですから、いつ世界のどこへ赴任するかわからないというのも現状です。なんとか機会を作って、近い将来、また幸兵衛先生の新作を拝見したいですね。イランと日本の交流をさらに深化させ、ラスター彩の美しさを世界に紹介していただきたいと思っています。

―今回、アラグチ次官をお迎えになった感想をお願いします。

<加藤幸兵衛氏> 絵付け指導縮小.jpg

アラグチ氏が初めていらしてくださったのは大使として日本に着任早々のことでした。非常に仕事のできる外交官という感じでした。文化に対する関心が非常に深くて、父の卓男がラスター彩の復元をしたことを非常にお喜びになり、様々な質問をされました。今回帰国の日にわざわざお訪ねいただいたことを大変光栄に思います。

今回せっかくいらしていただくのでどうやって歓迎しようかとスタッフとともに考えました。そして絵付けをしていただこうということになり、陶板を準備しました。


イランでは17世紀に発展したような精度の高いラスター彩が製作されておらず、日本のラスター彩のノウハウを現地の陶芸家に伝えたいと思っています。イランの陶芸家のプライドを傷つけないよう、ともに発展していきたいというスタンスで、これからも積極的に交流を続けていきたいと思っています。

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スタッフ縮小.jpg

政治体制や、文化、宗教は異なっても目指す高みは一緒、それが文化・芸術の特性であり、万国共通のハーモニーとなるのでしょう。文化・芸術を通じた人と人との交流を大切にした重層的な交流が、イランと日本の外交関係がさらに緊密化することを願います。

今回暖かい歓迎をしてくださいました幸兵衛窯のスタッフの皆様、ありがとうございました。

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