No.0020

2014年10月01日

激動する中東地域との真の相互理解を目指して~笹川中東イスラム基金の取り組み

「アラブの春」から一転、紛争に苦しむ中東地域

中東地域は、様々な部族や民族また宗教が多様に織りなす文化、伝統、歴史を持ち、また文明発祥の地のひとつとしても大変興味深い地域と言えます。その一方でその近代史は、アラブ・イスラエル紛争をはじめ、多くの民族、地域紛争に彩られ、不安定なそして複雑な様相を常に呈してきました。しかしながら、2010年に起こった「アラブの春」と呼ばれるアラブ諸国全体に及んだ民主化運動の波は、世界の注目をこの地域に集めるとともに、これまでの中東理解を一新しました。全世界が改めて注目する中、現在は民主化運動から一転して、新たなイスラエル・パレスチナ紛争の激化や、宗派間対立の先鋭化に端を発する紛争に再び苦しんでいます。

エジプトでの革命をめぐり、
活発な議論が交わされた第1回講演会

笹川中東イスラム基金は、日本にとってまだまだ遠い中東地域の政治、経済、外交問題への理解促進を目指し、最新の中東情勢に関する講演会やセミナーなどを随時開催しています。9月には中東情勢に関する講演会を2回開催しました。
第1回は9月5日(金)に、「大統領選後のエジプト」と題しヒシャム・エルゼメイティ駐日エジプト大使をお迎えしました。エルゼメイティ大使は、(1)「アラブの春」以後のエジプト内政、(2)それを取り巻く地域・国際的要素、(3)日本へのメッセージの3つの柱を立てて話されましたが、とりわけ2011年と2013年の2つの「革命」は、穏健かつ寛容で多様性といったエジプトのアイデンティティを守る闘いである点を強調。また、欧米・日本のメディアがこの側面を見落とし偏った報道を行っている点について懸念を表しました。これに対し、モデレーターの石合力・朝日新聞国際部部長は、ご自身のエジプトでの取材体験に基づき、2013年の革命に対する理解は大使と異なるとの問題提起をされ、会場は各々の解釈をめぐり活発な議論を交わしました。

第2回講演「ロシアから見た中東情勢」
では、カリフ制にも焦点

第2回は9月12日(金)にロシア科学アカデミー中東紛争分析センター長のアレキサンダー・シュミリン博士をお迎えし、「ロシアから見た中東情勢~シリア・イラク情勢をめぐって」と題し開催しました。講演会でシュミリン博士はシリア・イラク情勢に関して、第一次大戦から100年になる本年、1916年に作られた中東の勢力範囲を決定した国境線が、イスラム国という国を名乗りながら実際は国ではない組織によって打ち破られようとしていることを指摘。象徴としての「カリフ国家」の役割があることを強調しました。さらにシリア紛争におけるロシアの役割が、とりわけ化学兵器の使用をきっかけとして大きくなったこと、またイスラム国が最大の敵のひとつとして挙げているのは米国ではなく、ロシアであることも指摘しました。モデレーターの保坂修司・日本エネルギー経済研究所研究理事は、会場からの質問に答える形で、イスラム国のカリフ復活はオスマントルコのカリフ制(1924年に廃止)との連続性はないこと、またカリフ復活によるイスラム法による統治の復活の可能性も、まずないことを指摘しました。(詳しくは講演会動画をご覧ください https://www.youtube.com/watch?v=JzWIvOFz-d4

この2つの講演会には毎回100人を超える聴衆が参加し、激動が続く中東地域について活発なQ&Aセッションがもたれました。中東基金は今後とも相互理解の深化を目指し、様々な事業を推進していきます。

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