No.0015

2014年07月03日

今そこにある危機の対策を 民間の対話で共同提言 「日中海上航行安全対話」

尖閣諸島およびその周辺海域をめぐる、日本と中国間の不測の事態を回避する方策を検討するため、SPFと北京大学国際関係学院が協力してスタートした「日中海上航行安全対話」。中谷和弘東京大学大学院教授をはじめ、中国南海研究院の呉士存院長ら約20人の国際法、海洋法、安全保障諸分野の専門家が参加し、航行の安全と危機管理措置についての対話と検討を行い、報告書をまとめました。その経緯は、すでにプログレスナウ4月号で"注目の「日中海上航行安全対話 」尖閣問題解決への布石となるか" と題して紹介していますが、今回は、報告書完成後の活動などについてSPF の羽生会長に話を聞きました。

―この報告書の一番のポイントは何ですか

この報告書の大きなポイントは、そこに含まれている内容を採用しても、領土問題に関する両国それぞれの主張には影響を及ぼさないことです。その範囲で話し合うテーブルを用意したというところが、この「対話」の最大の特徴です。政府間では、領土問題に対する日中での認識が違うため、効果的な話し合いは期待できない状況にあり、意志はあったものの実現には至らなかったのではと考えられます。しかし、我々は民間だからこそ領土問題から離れて、あの領域での予期せぬ事故を防ごうという統一の意識のもと、信頼醸成と危機管理の手法について話し合うことができました。
こうした問題解決への話し合いは誰もが発想できるものですが、実際にはその場を誰も作っていなかった。それを誰よりも先に実現し、報告書を完成させるまでに至ったことは、大きな意味があるものと思っています。

―報告書完成後の活動について教えてください

羽生会長:日中双方の専門家が、両国政府やその他関係者に報告書の内容説明を行っています。2014年5月にはアメリカのブルッキングス研究所でセミナーを開催しました。このセミナーは、ブルッキングス研究所のリチャード・ブッシュ上席研究員が司会進行を務め、アメリカの代表的なシンクタンクや大学教育機関など、東アジアの安全保障問題に関心を持つ多くの専門家・研究者らが参加しています。そこで海上航行安全対話事業の背景や経緯、提言の内容と狙いについて説明し、提言の内容をどう政策に反映させていくかなど活発な議論が行われました。また、東京大学でも中谷教授が中国の法学界の専門家との交流の中でこの報告書をもとに議論の場を設けるなど、内容の浸透が進められています。

―今後はどのような活動を考えていますか

羽生会長:早ければ今年9月頃に北京で会合を開き、そこでこの問題に対処している海上保安庁や中国海警局をはじめ、可能であれば両国の外務省に対して報告書を提示し、説明を行う予定です。同時に、尖閣問題は国民的な課題でもあるので、一般の人々や学識経験者、ジャーナリストなどに広め、世論にも訴えていきたいと考えています。
また、空の方では相当なニアミスが始まっており、南シナ海ではベトナムと中国の間で激しさを増しています。日本の問題としては、まず航空における緊急安全対策を確立する必要があると誰もが感じているのではないでしょうか。この問題は防衛省が動くのが一番早いのですが、もしできないという場合には、中国の協力を得られるのであれば、我々民間でやってもいいとも思っています。

最初は解決方法を見つけるということではなく、民間で話し合うことだけでも意義があるという期待から始めたとのこと。しかし、進めていくうちに議論にも意義はあるけれども、具体的な問題だからこそ具体的に動いていかなければ成功とはいえない、と考えるようになったといいます。今後は必要があればどこへでも出向いてセミナー等を行い、報告書の浸透に努めていきたいと、羽生会長は意気込みます。

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