事業内容
スリランカは30年にも及んだ内戦が終結したが、シンハラ・タミルの両民族の分断はポストコンフリクト期の復興過程の障害となっている。一方スリランカにおける宗教指導者の有する社会的影響力は大きく、復興に向け重要な役割を担っている。当財団では、2005年度より断続的に宗教指導者を対象とした対話と能力開発を組み合わせた事業を展開してきた。紛争の終結した現在、コミュニティレベルで活動する次世代リーダーの育成とコミュニティへの働きかけの実践を支援することで、長期的観点からスリランカの統合的な発展を促す環境整備が求められている。本事業では、スリランカ北東部の11地域を3つのレベルに分け、それぞれが宗教指導者委員会の新規設立、宗教者委員会主導の若手リーダー育成、宗教指導者委員会や若手リーダーによるコミュニティ活動などを行う。これらの活動を通じ、宗教指導者によるスリランカ北東部の復興の努力を定着させることを目指す。
実施計画
3年事業の初年度にあたる本年度は、以下の活動を実施する。
- 宗教指導者委員会の拡充(フェーズⅠ地区:委員会が存在しないか弱い地域)
- シニア指導者のマッピング:委員会未設置の5地区にて宗教者を選定。
- シニア指導者のオリエンテーション
- シニア指導者対象のワークショップ:紛争管理、非暴力コミュニケーションの手法についての研修を実施。
- 若手指導者の能力向上(フェーズⅡ地区:委員会は確立しているが若手の活動が弱い3地域)
- 若手指導者オリエンテーションおよびワークショップ:実践活動の計画策定などの手法について研修を実施。
- 若手指導者フォローアップ・トレーニング:レポーティングおよび活動評価に関わるトレーニングを実施。
- コミュニティ活動の実践(主にフェーズⅢ地区:実践活動を展開できる3地域)
- 地区シビルソサエティ委員会:委員会を立ち上げ、一件15万円ほどのコミュニティ活動を公募。
- シビルアクション活動支援:公募された活動案および事業管理能力を審査した上で支援を行い、終了後レビューを行う。
- 宗教者ネットワーク化:ネットワーク活動を企画・運営するため、以下の活動を実施。
(1)全国大会 (2)全体調整会議 (3)全国会議 (4)ネットワークのデータベース構築
実施内容
・若手宗教指導者を対象としたトレーニングを実施
11月27日~29日にかけて、若手宗教指導者に対するオリエンテーション・トレーニングが行われました。仏教、ヒンズー教、イスラム教、キリスト教の各宗教界から、将来が有望視される若い宗教家たち24名が参加しました。オリエンテーション・トレーニングでは、コミュニティーにおける宗教指導者の役割、異宗教間連携による社会活動などについて学びました。それぞれの地域における、草の根活動のイニシアティブのとり方についても訓練しました。
オリエンテーション・トレーニングの間、若い宗教家たちは真剣なまなざしで、教官の一字一句に聞き入る姿勢をみせ、各参加者の意識の高さを実感しました。これは、各宗教界の代表として選抜された栄誉と、将来の国づくりを担う自覚を、彼らが持っていることの証拠です。彼らの平和を希求する姿勢から、平和で安定したスリランカの将来の姿を想像することができました。
事業結果・成果
本事業は、スリランカで社会的影響力の大きい宗教指導者の力を借りて、内戦終結後のスリランカ北東部地域の和平定着を図ることを目的としています。
本年度は、スリランカ北東部で社会貢献活動を実践しているシニアの宗教指導者100名を新たに発掘したほか、将来有望な若手宗教指導者24名を選抜して、他宗教交流の機会を提供するためのオリエンテーションを実施しました。また、内戦で分断した地域社会の異民族・他宗教間の融合を図るために、10件のコミュニティ活動を公募で選び、これらを実践に移しました。例えば、シンハラ人の子供たちにタミール語を教えたり、大洪水で被災した仏教寺院とモスクを、仏教徒とイスラム教徒が共同で再建するなどの実践活動を行いました。こうした異民族・他宗教間の取り組みは、30年に及んだ内戦後のスリランカ東北部の和平の定着と復興に貢献しました。
2010年7月22日、スリランカ北東部のトリンコマリーで、仏教、ヒンズー、イスラム教、キリスト教の宗教指導者が一堂に会し交流する様子
事業実施者 |
セワランカ財団(スリランカ)
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年数 |
3年継続事業の1年目(1/3) |
形態 |
自主助成委託その他 |
事業費 |
10,037,817円 |