事業紹介

2012年
事業

ミャンマーASEAN議長国支援

事業概要
ミャンマーは2014年にASEAN議長国に就任する予定である。ASEAN首脳サミットなど400件を超える諸会議を成功に導くことは、民主化・改革路線を明確にして国際社会との関係改善を図るティン・セイン政権にとって、最大の国家的課題である。ミャンマー政府職員は国際社会との接触を厳しく制限されていたため、これまで国際会議の企画と運営に関する経験を積むことが困難であった。このため、ASEAN議長国として成功裏にその任を全うするためには政府職員の能力向上が不可欠であるとして、国際社会の制裁下に置かれたミャンマーに対し、公務員研修など継続的に支援を行ってきた当財団に対して同国外務大臣から支援の要請がなされた。
本事業は、ミャンマー政府職員の国際会議開催の能力向上を目的として以下の活動を実施する。
2012年度は、議長国のカンボジア(2012年)とブルネイ(2013年予定)、ASEAN事務局にインターンを送り、国際会議の企画から運営までの一連のプロセスを実践的に体験し、学習する。また、政府職員からなる研修視察団を、議長国としての経験を有するインドネシア(2011年)とカンボジア(2012年)に派遣して、情報の共有化を図る。
実施計画
2年継続事業の初年度にあたる本年度は、下記の活動を行う。
  • ミャンマー政府職員・ASEAN国際会議開催に関する能力向上(ミャンマーASEAN国内委員会に委託)
    • 議長国(カンボジア、ブルネイ)とASEAN事務局へのインターン派遣
      • 2012年4月~12月、カンボジアへ2名派遣
      • 2013年1月~3月、ブルネイへ2名派遣
      • 2012年4月~2013年3月、ASEAN事務局へ計4名派遣
    • ASEAN域内各国への視察研修団の派遣(10日間、カンボジア10名、域内各国6名)
    • 日本で開催される国際会議への研修視察団の派遣、会議運営ワークショップへの参加
      • 日本で開催される各種の国際会議に視察研修団を派遣
      • 国際会議の準備、運営に関する短期集中ワークショップに参加
    • 通訳官能力強化に向けた集中研修への職員派遣
  • 日本国内外での研修活動の実施
    • 国際会議運営の研修(業務委託)
    • 通訳官の能力強化のためのプログラム実施(業務委託)
    • 研修専門機関での短期集中研修(業務委託)(於 シンガポールほか)
    • ミャンマー政府との調整・モニタリング
事業成果
第1回通訳官養成研修の開催
6月18日から4日間の日程で、第1回通訳官養成研修が、ヤンゴン大学付属国立英語語学センターを会場に行われました。今回の研修には、ミャンマー外務省、国防省、文化省、国会事務局、経済発展省、文部省から総勢35名が参加しました。初日にはMyo Myint外務副大臣出席のもと、開会式が行われました。

初日から3日目まではボイストレーニング、ディクテーション、リプロダクション、シャドーイングなどの通訳技能に関する実習を受けました。最終日の4日目は選抜者15名に絞り、上記の訓練にくわえ、ティン・セイン大統領の施政方針演説原稿を使った同時通訳訓練などの集中講義と演習が行われました。

今年度は、日本の同時通訳者養成の専門家の支援を得ながら、ミャンマーと日本で継続的にトレーニングが行われる予定です。
 
 
 
●第2回通訳官養成研修の開催
第2回通訳官養成研修が7月31日から5日間の日程でヤンゴン大学付属国立英語語学センターにおいて開催されました。このセミナーには各省から選抜された14名が参加しました。

今回の研修ではASEAN議長国としての通訳業務を視野に入れ、国際組織としてのASEANの機能とASEAN諸国を取り巻く問題に焦点を絞ったオリジナル教材が利用されました。通訳技能の基礎訓練方法であるディクテーション、リプロダクション、シャドーイング、実際のASEANサミットや外相会議でのスピーチを利用した同時通訳の訓練が集中的に行われました。また外務省の職員立ち会いのもと、ASEANに関する専門用語や用語集の作成方法の講義が行われました。

今年度は、ミャンマーにおける研修が5回(第1回および第2回研修を含む)、日本における研修1回が実施されます。第3回通訳官養成研修は、ヤンゴンで9月末に開催される予定です。
 
 
 
●第3回通訳官養成研修の開催
第3回通訳官養成研修が9月24日から6日間の日程でヤンゴン大学付属国立英語語学センターにおいて開催されました。このセミナーには各省から選抜された12名が参加しました。

今回の研修も前回に引き続き、ASEAN議長国としての通訳業務を視野に入れ、エネルギー問題や食糧問題などASEAN諸国を取り巻く問題やASEANエネルギー大臣会合(ASEM)などに関する音声教材等、実際に通訳することが予想される内容に即した実践的な教材が使用されました。また、研修期間中にティン・セイン大統領が国連でスピーチを行ったことから、同時通訳の音声を入手し、それを使った訓練も行いました。さらに、今回は、ノートテイキングやシャドーイングなどの通訳技能の基礎訓練に加え、ミャンマー語-英語間の転換にも重点をおきました。ASEANに関する専門用語に詳しく、実際のASEAN会議に直接携わっているミャンマー外務省ASEAN局の中堅職員が、参加者による逐次・同時通訳がミャンマー語-英語間で適切に転換されているかどうか評価の上、必要なアドバイス与えました。

研修終了後には、来年の1月に日本で開催される第5回研修に参加する8名が発表されました。第4回通訳官養成研修は、来る12月中旬にヤンゴンで開催される予定です。
 
 
 
●第4回通訳官養成研修の開催
第4回通訳官養成研修は12月17日から6日間の日程でヤンゴン大学付属国立英語語学センターで開催されました。このセミナーには各省から選抜された14名に加え、教育省から推薦された5名がオブザーバーとして参加しました。

今回の研修も、ASEAN議長国として実際に行う通訳業務を視野に入れ、教育や労働問題、貧困や防災対策などASEAN諸国を取り巻く課題に関する教材が使用されました。さらに、より実践的な通訳技能を身につけるため、それらを議題としたASEAN教育大臣会合(AEM)など、実際に通訳することが予想される内容に即した音声教材も使用されました。

また、当事業のもう1つの柱である、ASEAN国際会議の開催に関する能力向上のためプログラム(ミャンマーASEAN国内員会に業務委託)で、研修生のZaw Win氏がカンボジア(2012年議長国)派遣団の一員として教育省からASEANサミット(11月18日~21日 プノンペン)に派遣されたことから、研修団の視察内容とその考察についてのプレゼンテーションが行われました。2014年に通訳官としてASEAN関連会議に臨む研修生にとっては、実践的で有益な内容であり、活発に質疑応答がなされました。

第5回通訳官養成研修は、選抜された8名を対象に1月21日から東京で開催される予定です。
 
 
 
●第5回通訳官養成研修の開催
第5回通訳官養成研修は、1月21日から5日間の日程で東京の(株)ディプロマットに委託して行われました。このセミナーには第1回から4回の研修参加者のなかから選抜された8名が参加しました。

今回の研修では新たな試みとして、ASEAN議長国として実際に行う通訳業務を前提に、ASEANをめぐる経済問題やインターネットを駆使した通訳用語集の作成方法などが取り入れられました。また、最新の通訳ブースや機器を使ってより実践的な演習を行いました。

この研修は日本で行われたことから、笹川平和財団中東イスラム基金主催の「今後の日本の政治の展望」に関するセミナーを聴きました。このセミナーには、研修の講師陣が同時通訳者として従事したため、国際会議における同時通訳者の実際の仕事内容を学ぶ機会を得ました。

本年度最後となる第6回通訳官養成研修は、3月4日から6日間の日程でヤンゴンにおいて開催されます。
 
(株)ディプロマットにおける研修

(株)ディプロマットにおける研修

 
左:日本財団ビル会議室内同時通訳ブースでの通訳訓練           右:笹川日本財団会長表敬訪問

左:日本財団ビル会議室内同時通訳ブースでの通訳訓練     右:笹川日本財団会長表敬訪問

 
左:羽生笹川平和財団会長表敬訪問            右:鎌倉視察

左:羽生笹川平和財団会長表敬訪問    右:鎌倉視察

●第6回通訳官養成研修の開催
2012年度の締めくくりとなる第6回通訳官養成研修は、3月4日から6日までの間、ヤンゴン大学付属国立英語語学センターで開催されました。この研修には各省から選抜された13名が参加しました。

今回の研修では、実際に通訳を行う環境に適応するため、教室内の演台を利用して1名が講演者として、もう1名がその通訳者として演習する方法が多用されました。教材として、2012年の議長国であるカンボジアの成果やASEANを取り巻く状況、2015年までに構築が予定されているASEAN経済共同体に関わる域内の動き、ASEAN諸国と周辺アジア諸国・欧米諸国間の文化的違いやそれを起因とする衝突など具体的なテーマが取り上げられました。
最終日には、当財団、ミャンマー外務省、研修の業務委託先である(株)ディプロマットの3者から参加者に対し2012年度の修了書が手交されました。

ミャンマーがASEAN議長国となる2014年1月まで残るところ9か月となりましたが、通訳官養成研修は継続実施されます。2013度の第1回通訳養成研修は、5月13日から6日間の日程でヤンゴンにおいて開催する予定です。
 
 
 

事業実施者 笹川平和財団 年数 2年継続事業の1年目(1/2)
形態 自主助成委託その他 事業費 25,607,211円