事業紹介

2012年
事業

ASEAN域内対話強化と統合促進

事業概要
本事業では、ASEAN主要メンバー国を対象に、安全保障や経済協力など域内課題について、ハイレベルの専門家による知的対話を行ってきた。ASEANの機能強化に向けて、多様なセクターからの参加者を得て民間主導での対話を促すことを目指す。2011年度には、マレーシア・インドネシア・タイ・ベトナムの4か国から、政府高官と代表的なシンクタンク、大学、NGOの関係者が参加し、テロ、労働問題、南シナ海領有権問題など域内の主要課題について議論した。本年度は、新たにミャンマー、ラオス、カンボジアを加える。日本人専門家の参加も得て、ASEAN共同体の実現や東アジア域内協力強化に向けた日本の貢献について議論を深める。
実施計画
3年継続事業の2年目にあたる本年度は、マレーシア・インドネシア・タイ・ベトナムの4か国に、新たにミャンマー、カンボジア、ラオスを加えて、助成先のマレーシア外交政策研究会(FPSG)が次の活動を行う。
  • 準備会合の実施
    国際会議の開催に向けた事前調整のため、FPSG担当者がヤンゴン、プノンペン、ビエンチャンを訪問し、関係機関と意見交換を行う。
  • 国際会議の開催(3回)
    • 国際会議はクアラルンプールで2回、ペナンで1回の開催を予定。
      クアラルンプール:
      メディアや企業を含む民間セクターからの積極的な参加を得て、ASEAN共同体形成の三本柱とされる政治・安全保障共同体、経済共同体、人的交流強化に関わる課題について議論を行う。
      ペナン:
      ASEANの将来を担う青年リーダーを集め、マレーシア科学大学(USM)の協力のもと「域内統合強化と次世代リーダーの役割」(仮)について議論を行う。
    • 報告書の作成と成果の共有:各会議の成果は提言書にまとめ、ASEAN事務局や域内外の外務省などに配布する。
    • ASEAN域内統合における日本の貢献について議論を深めるため、対象国からの参加者に加え、日本から安全保障と経済協力の各分野に関わる専門家の参加を得る。
事業成果
第1回国際会議の開催
マレーシア外交政策研究会(FPSG)主催により、8月27日と28日の2日間にわたって、第1回国際会議がマレーシア外務省外交問題研究所(IDFR)において開催されました。「ASEANビジョン2020」を基本テーマに据えて、マレーシアのほか、ラオス、ミャンマー、カンボジアの計4カ国が参加しました。

昨年度の国際会議の参加国は、ベトナムのほかは、主としてASEAN原加盟国(タイ、インドネシア、マレーシア)でした。今年度は、ASEANに遅れて加盟した国(以下、新規加盟国)をマレーシアに招待して国際会議が行なわれる予定です。これは、将来においてASEAN域内統合を実現しようとする場合、原加盟国と新規加盟国との間の経済格差解消が重要課題となり、その格差拡大は社会・政治状況を不安定化し、結果として域内統合を阻害する可能性があるとの認識によるものです。

第1回国際会議で発表された主要トピックは、「ASEAN共同体とCLMV(政治、経済)」、「AEANの地政学環境の変化(安全保障)」、「ASEANと米中印関係」などでした。

*個別のトピックは添付のプログラムをご覧ください。

発表者は元大使・外交官、国立大学や研究所の研究者、NGO活動家など、多様なセクターから集まり、専門性の高い発表が行われました。また聴講者として、在マレーシアのシンガポール、パキスタン、ロシア、オーストラリア、日本の大使館から大使、公使、書記官のほか、マレーシア政府機関(外務省、国防省、大学等)や国内で活動するジャーナリストや評論家など約50名が加わり、将来のASEAN 域内統合に関わる諸問題について、フロアから意見を述べました。
 
 
 
 
第2回国際会議の開催
第2回国際会議が12月3日から4日の間、マレーシア外交政策研究会(FPSG)主催で開催されました。会場は、8月の第1回国際会議と同じくクアラルンプール市内のマレーシア外務省外交問題研究所(IDFR)です。本会議には、主催国のマレーシアの他に、ブルネイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、シンガポールの7カ国が参加しました。

各国からの参加者は、官民のセクターからバランスよく集められ、外交・戦略の研究所の所長や研究者、国立大学の教授と准教授、外務省幹部、企業コンサルタント、NGO活動家などでした。本会議は昨年度の事業開始から通算5回にのぼり、認知度も高くなったことから、在マレーシアの外国大使館の関係者の姿も見られました。

はじめに、前マレーシア首相(内務大臣、財務大臣兼務)のアブドゥラ・ビン・ハジ・アフマッド・バダウィ氏(Abdullah bin Haji Ahmad Badawi)が基調講演を行ないました。

2日間にわたる国際会議は、5つの分科会から構成されました。各分科会のテーマは次の通りです。
第1分科会:ASEAN地域の地政学環境の変化
第2分科会:二国間問題の視点から見た域内統合
第3分科会:経済共同体(AEC)
第4分科会:その他(第1~第3、第5分科会に入らないテーマ)
第5分科会:保護する責任(R2P)

*国際会議のプログラムは、こちらをご覧ください。
 
国際会議場:マレーシア外務省外交問題研究所(左右)

国際会議場:マレーシア外務省外交問題研究所(左右)

 
左:歓迎の辞(FPSG副会長、Mr. Santhananaban)     右:基調講演(マレーシア前首相、Mr. Badawi))

左:歓迎の辞(FPSG副会長、Mr. Santhananaban)     右:基調講演(マレーシア前首相、Mr. Badawi))

 
左:分科会    右:昼食会風景

左:分科会    右:昼食会風景

●第3回国際会議の開催
2012年12月10日から11日の間、マレーシアのペナンで若者を対象にした第3回国際会が開催されました。ブルネイを除くASEAN加盟国の代表者20名が参加しました。このワークショップは、ASEANの発展と平和に若者がどのような役割を果たすのかを話し合い、意識を高める目的で行なわれました。

さまざまな生い立ちや教育的背景を持った若者たちが、2日間にわたってグループワークとグループ発表を通して意義ある対話を行ない、互いへの理解を深めました。

ほかにも、グループ間の討論会や、エッセーコンテストなど、さまざまなイベントが行われました。エッセーコンテストでは、ミャンマーの民主化について深い考察を加えたThuta Aung氏による「傷んだリンゴから世界の寵児へ(原題:"From bad apple to darling of the world")」が優秀作品に選ばれました。

若者のエネルギーと意欲が、2015年施行を目指す「ASEAN共同体」への大きな希望をつなぐ会議となりました。
 
 
●マレーシアとASEAN共同体:民主的共同体構築と地域統合促進に向けた若者の役割
助成先のマレーシア外交政策研究会が『Malaysia and the ASEAN Community: Institutional Democracy and Active Regional Integration -Inquiry on Role of Youth, Democracy Building-』と題した報告書をまとめました。本事業の中心人物であるアザーリ・カリム准教授(マレーシア科学大学)が、2011年7月から2012年3月までに行われた会議やセミナーをもとに、執筆したものです。

2015年までのASEAN共同体実現には、ASEAN機構改編や加盟国の共通アイデンティティ構築、域内の外交問題など、多くの課題が山積しています。また、経済水準や民主化のレベルに大きな格差があり、地域統合の障害となっています。このようなASEANの状況を鑑み、本報告書には、民主的機構としてのASEAN共同体設立に向けた様々な提案や解決すべき課題が盛り込まれています。

特に、アザーリ・カリム准教授は、同域内労働力人口の約半数を占める若者への民主主義、地域主義教育と彼らによる共同体形成への参加が不可欠だと指摘しています。民主的価値観を持ち、外交に精通する若手リーダー育成事業の実施が、ASEAN共同体の継続的発展につながると強調しています。

事業実施者 マレーシア外交政策研究会 (FPSG/マレーシア) 年数 3年継続事業の2年目(2/3)
形態 自主助成委託その他 事業費 10,953,666円