事業紹介

2014年
事業

348 日中東シナ海安全対話

事業実施者 笹川平和財団 年数 3年継続事業の1年目(1/3)
形態 自主助成委託その他 事業費 11,249,823円
概要

本事業の取り組みの背景と、日中で合同検討会を開くまでに至った経緯などについてご説明いたします。

背景

尖閣諸島周辺の不測の事態を未然に防ぐため、笹川平和財団笹川日中友好基金では、2013年8月から「日中海上航行安全対話」を開始いたしました。以来、日中双方の国際法、海洋法、安全保障諸分野の専門家たちが集まり、検討会をつづけてまいりました。

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日中それぞれが国内で検討を進め、日中両国のメンバーがそろう合同検討会を3度開催いたしました。検討会では、当該海域での航行安全と危機管理措置について対話をし、最後に、危機的状況を制御し緩和していく方策に関する報告書日本語中文)をまとめました。

そして、その報告書について、2014年5月2日、アメリカのブルッキングス研究所でテーブルを囲んだセミナーが開催されました。

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セミナーには、アメリカの代表的なシンクタンクの専門家や、大学などで東アジアの安全保障を研究する学者と専門家が集まりました。そして、提言書に示された「信頼醸成措置」の参考となる事例の有無や、提言内容を政策に反映させるためのチャンネルをどう確保するかなど、盛んな意見交換が行われました。

そのコメントのなかに、「空の安全」も射程に入れた包括的な対話が必要であるという声もありました。尖閣諸島周辺での不測の事態を未然に防ぐためには、「海」だけでなく「空」もあわせて議論する必要は、それまでの検討会のなかでもたびたび議論されてきた点でした。

そうした経緯をふまえ、2014年度からは海域にあわせ空域についても、日中の民間のパイプで専門家で議論を重ねることとしました。

「対話」のメンバー

日本側は、東京大学大学院法学政治学研究科中谷和弘教授(国際法)を座長に、大阪大学大学院、海洋政策研究財団、防衛大学校などにご所属の方々にご参加いただいております。

中国側は、南京大学中国南海研究協同創新センター朱鋒主任(Zhu Feng、国際関係学、東アジアの安全保障)を座長に、中国南海研究院、中国国防大学、北京大学、中国人民大学などにご所属の方々にご参加いただいております。

第1回合同検討会(北京)

「日中東シナ海空域安全対話」第1回合同検討会北京で開催(2014.10.29-30)

笹川平和財団・笹川日中友好基金が実施している「日中東シナ海安全対話」の一環として、東シナ海の空域の安全対策をテーマに日中両国の海洋及び空域安全の専門家による第一回合同検討会を2014年10月29日、30日に中国・北京で開催しました(笹川平和財団と中国南海研究協同創新センターの共催により実施)

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民間主催の対話の試みとして、日本側より空域安全の問題に詳しい元航空自衛隊・海上自衛隊の将官級OBや、民間航空、国際法・安全保障の専門家が参加、中国側からは、国防大学・空軍・海軍の専門家や、国際法・安全保障問題の研究者が何れも個人の立場で参加しました。

検討は29日午後の第一部と、30日午前の第二部に分かれて行われました。

第一部では、日中双方が最近東シナ海の空域で発生した危険な事例について協議し、同空域の安全を脅かす現状に関する認識を共有したうえで、今まで多国間及び二国間で合意された事故防止のための行動規範の内容を日中の空域安全を確保するためのルール作りに応用する可能性について意見交換がなされました。

第二部では、日中双方の専門家が自国の航空識別圏を設定する際の基本的な立場を説明、互いに相手側の立場を確認し合ったほか、東シナ海上空飛行の規範作りを進める中で直面しうる国際法上の諸問題について初歩的な整理作業を行いました。

今回が第一回となる東シナ海空域の安全に関する合同検討会では、空域の安全を脅かす危険な飛行事例や、航空識別圏の設定など、日中双方の意見が著しく対立する議論も行われましたが、空域の安全が担保されていない現状に関する認識を共有し、危険を回避するための共通のルール形成を目指し、今後も専門家同士で検討を重ねていくことに日中双方が合意し、建設的な会合となりました。

また、今回の合同検討会での議論を踏まえ、第二回合同検討会を2015年2月上旬に東京で開催することが決定されました。次回は、今回の検討会で確認できた安全規範、信頼醸成、法的問題などに関する課題を更に具体化し、より専門的な検討を行うことを予定しています。

第2回合同検討会(東京)

「日中東シナ海空域安全対話」第2回合同検討会を東京で開催(2015.2.3 - 4)

笹川平和財団・笹川日中友好基金が実施している「日中東シナ海安全対話」の一環として、東シナ海の空域の安全対策をテーマに、日中両国の専門家による二回合同検討会を2015年2月3日(火)~4日(木)に東京で開催しました。

この合同検討会は、笹川平和財団と中国南海研究協同創新センターの共催によるものです。

この民間主催の対話の試みには、日本側からは、空域安全の問題に詳しい元航空自衛隊や海上自衛隊の将官級のOBや、民間航空、国際法及び安全保障の専門家が参加しました。中国側からは、人民解放軍国防大学及び現役の空軍と海軍の専門家や、国際法と安全保障問題の研究者が、いずれも個人の立場で参加しました。

昨年10月中国北京で実施された第一回合同検討会では、日中双方の参加者は、東シナ海の空域の安全が担保されていない現状に関する認識を共有し、危険を回避するための共通のルールを形成する必要性について意見が一致しました。

この結果をうけて、今回の第二回合同検討会は、3日午後の第一部と午後の第二部、翌4日午前の第三部の三部に分かれて行われました。

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検討会のようす

第一部では、航空識別圏(ADIZ)に係わる法的問題について、双方の専門家が自国の航空識別圏の設定に係わる基本的立場を説明し、国際法の立場から相手国のADIZ設定に対する評価を試み、これに関連する国際法上の諸問題について意見を交わしました。

第二部においては、第一回合同検討会で合意を得た東シナ海空域の安全を確保するための行動規範を作成する作業を行ないました。事前に作成された行動規範草案の項目に沿って、各項目の内容の詳細について検討しました。

第三部では、東シナ海の空域の安全を確保するための危機管理と信頼醸成措置(CBM)の導入について意見を交わしました。

そして、今後、今回の合同検討会で取り交わされた議論をとりまとめ、「日中東シナ海空域安全行動規範」(仮称)と、危機管理及びCBMに関する提案書に反映するために、2015年4月に少人数の専門家による作業部会を中国で実施し、最終的に行動規範と危機管理及びCBMに関する提案書を6月頃に完成し、公表することを決定しました。

日中海上航行安全対話報告書(日本語).pdf 日中海上航行安全对话报告(中文).pdf

また、検討会が終了した後、この対話の主旨、経緯と今回検討された内容などをメディアを通じてパブリックに公開するため、記者会見を行ないました。

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記者会見のようす

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