事業紹介

2015年
事業

355 戦後和解に向けた日中戦略対話

事業概要

日中関係の回復を妨げる要因の一つとして、戦前の日本の歴史についての評価と、これに関連する言動を巡る両国間の対立があります。2015年は終戦70年の節目の年となりますが、尖閣諸島と歴史問題に象徴される日中間の確執から見て、両国政府が歴史認識を共有し、それを踏まえた未来志向の日中関係について話し合うイニシアチブを直ちに取ることは難しいようです。現状を放置すれば、両国で偏狭なナショナリズムが高揚し、二国間関係がさらに悪化するのみならず、東アジア全体の不安定化につながる恐れがあります。


本事業では、日中両国の専門家が両国の過去の歴史について得られた一定の共通認識に基づいて、未来志向の日中関係の在り方を検討する努力を通じて、戦後世代間の和解に向けた努力を両国民および国際社会にアピールし、歴史和解の概念を両国民に広く浸透させ、相互理解と信頼関係の構築に貢献するものです。

事業実施者 笹川平和財団 年数 5年継続事業の1年目(1/5)
形態 自主助成委託その他 事業費 12,252,303円
「歴史認識と日中関係の未来」

日中共同研究プロジェクトが北京大学でスタート

 355-002.JPG3月9日北京大学北閣における第一回合同会議の様子

 

 201639日、公益財団法人笹川平和財団と北京大学国際戦略研究院は北京大学で「歴史認識と日中関係の未来」と題した共同研究プロジェクトの第一回合同会議ならびに記者会見を開催しました。

 

【1.プロジェクトの目的】

 日中関係の発展を阻害する問題の一つとして、双方がいまだに日中戦争の歴史認識問題について満足のいく共通認識に至っていないことがあげられます。本プロジェクトの目標は、1931年から45年の日中戦争の原因、性質、影響および教訓などの歴史認識問題について有識者による議論を重ね、双方の歴史認識に関する共通認識を基礎に、両国が直面する課題を整理し、解決策をもとめ、未来の日中関係像に関して模索していくことにあります。

 

【2.専門家委員会】

 本プロジェクトでは、日中双方でシニア外交官、歴史学者、国際関係学者、メディアジャーナリストなど分野横断的な有識者(各々10人程)によって構成される専門家委員会を組織しました。専門家委員は個人の資格で研究に参加し、対話の成果を発表する予定です。 日中専門家委員会メンバー:commitee.pdf

 両国の専門家が初めて一堂に会した今回の会合で、日中双方の委員長、副委員長が選出されました。宮本アジア研究所代表の宮本雄二元駐中国日本大使が日本側委員長、京都大学法学研究科の中西寛教授が副委員長に就任しました。中国側は外交学院元院長の呉建民大使が委員長、中国社会科学院近代史研究所の歩平前所長が副委員長に就任しました。

 

【3.会議概要】

(1)今回の合同会議は、第一回ということもあり、まず王緝思北京大学国際戦略研究院院長と羽生次郎笹川平和財団会長からプロジェクトの概要と目的が説明されました。次いで会議に出席した専門家委員は、自身の研究領域や関心を持っている分野などを紹介しあい、プロジェクトの研究目的、対象、内容など2016年度の実施計画、基本的な枠組みについて意見交換しました。

(2)双方は今後の研究の具体的テーマを定め、関連分野のより多くの専門家の参加を求めること、プロジェクトの段階的な成果と最終的な成果は、双方協議のうえで公開発表することで合意しました。

(3)同検討会では、「2006年11月の日中共同宣言からスタートした両国政府支援による歴史共同研究から考えるとほぼ10年に近い歳月が過ぎた。研究も進展し、国際的視野からの再検討が必要」、「日中両国の圧倒的な多数の人々が戦争を経験していない今日にあって、両国国民間で歴史認識問題におけるより多くの共通認識を達成し、未来に向かって日中関係の協力を考えることが不可欠」などの指摘がされました。

 

【4.記者会見と今後の予定】

 合同会議の後に開催した記者会見には、在京日本メディアや中国メディア各社が出席し、関連報道がされました。本事業は2016年から2020年までの5年間にわたって実施し、次回の合同会議は2016年の下半期に東京で実施する予定です。

 355-003.JPG記者会見に臨む日中専門家委員会代表

 

355-004.JPG  「歴史認識と日中関係の未来」記者会見の様子

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