OPRIについて

排他的経済水域及び大陸棚の総合的な開発、利用、保全等に関する法律(要綱案)

第一 総則

一 目的
この法律は、海洋法に関する国際連合条約(以下「国連海洋法条約」という。)その他の国際約束に基づき、かつ、海洋基本法(平成十九年法律第三十三号)にのっとり、排他的経済水域等(排他的経済水域及び大陸棚に関する法律(平成八年法律第七十四号)第一条第一項の排他的経済水域及び同法第二条の大陸棚をいう。以下同じ。)の総合的な開発、利用、保全等を図るため、基本理念、政府による基本方針の策定その他の必要な事項を定めることにより、海洋環境の保全を図りつつ海洋の持続的な開発及び利用を促進し、もって我が国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上を図るとともに、人類と海洋の共生に貢献することを目的とすること。
二 基本理念
  1. 1我が国が、排他的経済水域等の総合的な開発、利用、保全等を通じ、国連海洋法条約に基づく沿岸国としての主権的権利及び管轄権の履行を適切に行ない、国際社会の一員として求められる役割を果たすものとすること。
  2. 2我が国における排他的経済水域等の総合的な開発、利用、保全等を図るに当たっては、海洋資源、海洋環境、海上交通等の海洋に関する諸問題が相互に密接な関連を有し、かつ、全体として対処する必要があることから、関係行政機関が連携して総合的かつ一体的に行うものとすること。
  3. 3我が国の排他的経済水域等における海域ごとの特性に応じ、総合的な開発、利用、保全等を計画的に行うものとすること。
  4. 4排他的経済水域等の開発、利用に当たっては、陸域と異なる海洋の特性を踏まえ、海洋環境の保全との調和を図るために必要な措置を十分に講じるものとすること。
  5. 5排他的経済水域等の総合的な開発、利用、保全等を行なうため、自然環境、生物の生息状況等に関する調査を推進するとともに、科学的知見を広く共有する観点から、国際的協調の下にその推進を図るものとすること。
  6. 6海洋の平和的な開発、利用に関する国際協力を推進するとともに、我が国の排他的経済水域等の画定等海洋に関する国際問題については、国連海洋法条約に基づき平和的に解決を図るものとすること。
三 国の責務
国は、排他的経済水域等の開発、利用、保全等が総合的に行なわれるための施策を策定し、及び実施する責務を有するものとすること。

第二 基本方針

  1. 1政府は、排他的経済水域等の総合的な開発、利用、保全等に関する基本的な方針(以下、「基本方針」という。)を定めなければならないものとすること。
  2. 2基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとすること。
    1. (1)排他的経済水域等の総合的な開発、利用、保全等の意義
    2. (2)排他的経済水域等の総合的な開発、利用、保全等のために政府が実施すべき施策に関する基本的な方針
    3. (3)排他的経済水域等の特性に応じた区分による海域等ごとの海域等計画の作成に関する基本的な事項
    4. (4)排他的経済水域等における調査に関する基本的な事項
    5. (5)その他排他的経済水域等の総合的な開発、利用、保全等に関する重要事項
  3. 3主務大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないものとすること。

第三 海域等計画

一 海域等計画
  1. 1主務大臣は、排他的経済水域等をその特性に応じ政令で定めるところにより区分した海域等について、その総合的な開発、利用、保全等を推進するための海域等計画を定めるものとすること。
  2. 2海域等計画においては、次に掲げる事項を記載するものとすること。
    1. (1)当該海域等における総合的な開発、利用、保全等に関する方針
    2. (2)当該海域等における総合的な開発、利用、保全等に関する目標
    3. (3)当該海域等における区域区分
    4. (4)区域区分ごとの総合的な開発、利用、保全等を推進するための主要な施策に関する事項
  3. 32(3)による区域区分においては、当該区域における生態系の特質等に鑑みて、環境保全を図るための特別の配慮が必要な特定海域等を定めることができるものとすること。
  4. 42(3)により区分された区域区分の中に、次に掲げる区域の全部又は一部を含む場合、当該区域を示すものとすること。
    1. (1)鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)第五条に規定する鉱区
    2. (2)漁業法(昭和二十四年第二百六十七号)第六条第二項に規定する共同漁業権に係る漁場の区域
    3. (3)文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第百九条第一項に規定する天然記念物
    4. (4)水産資源保護法(昭和二十六年法律第三百十三号)第十四条に規定する保護水面
    5. (5)自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)第二条第一号に規定する自然公園
    6. (6)海洋水産資源開発促進法(昭和四十六年法律第六十号)第十二条に規定する指定海域
    7. (7)自然環境保全法(昭和四十七年法律第八十五号)第十四条第一項に規定される原生自然環境保全地域及び同法第二十二条第一項に規定される自然環境保全地域
    8. (8)絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年法律第七十五号)第三十六条第一項に規定する生息地等保護区
    9. (9)鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号)第二十八条第一項に規定する鳥獣保護区
  5. 54のように区域を定める現行法が存在しないものについては、新たに当該区域についての規定を創設すること。なお、その新たな区域の利用促進に関する法律を別途整備する場合には、当該法律に利用区域に関する制度を定め、本規定においてそれに基づく区域を定めることもあり得る。
  6. 6主務大臣は、海域等計画を定めようとするときは、関係行政機関の長と協議し、二に規定する海域等計画協議会における協議をしなければならないものとすること。
  7. 7海域等計画の定められた海域等において、3の各号に掲げる法律に基づき当該各号に掲げる区域を新たに設定しようとする又は設定を許可等しようとする者は、主務大臣及び関係省庁の長に協議しなければならないものとすること。
  8. 8主務大臣は、5の協議を受けた場合、当該区域の設定に関し、二に規定する海域等計画協議会における協議をし、海域等計画を改正しなければならないものとすること。
  9. 9海域等計画の定められた海域等において行なわれる行為に係る許可等を行なう者は、当該行為が、当該行為が行われる海域等の海域等計画に基づく当該海域等における総合的な開発、利用、保全等を阻害しないものであるかどうかを審査しなければならないものとし、そのために主務大臣の意見を聞かなければならないものとすること。
二 海域等計画協議会
  1. 1海域等計画及びその実施に関し必要な事項等について協議するため、一の1により区分した海域等ごとに、国の関係各地方行政機関及び関係都道府県により、海域等計画協議会(以下「協議会」という。)を組織するものとすること。
  2. 2協議会は、必要と認めるときは、協議により、当該海域等における開発、利用、保全等に関係する事業者、学識経験を有する者その他海域等計画の実施に密接な関係を有する者を参加させることができるものとすること。

第四 海洋構築物等の設置の許可制度の創設

  1. 1海域等計画の定められた排他的水域等において海洋構築物等(海洋構築物等に係る安全水域の設定等に関する法律第二条第一項に規定する海洋構築物等をいう。)の設置を行なおうとする者(他の法律の規定により当該海洋構築物等の設置を含む行為について許可等を受けた者又は受けようとする者を除く)は、主務大臣の許可を受けなければならないものとすること。
  2. 2主務大臣は、1の許可の申請があつた場合には、遅滞なく、その概要を告示するとともに、申請書等の書面をその告示の日から一月間公衆の縦覧に供しなければならないものとすること。
  3. 3主務大臣は、2の告示をしたときは、遅滞なく、その旨を関係行政機関の長に通知し、期間を指定して当該関係行政機関の長の意見を求めなければならないものとすること。
  4. 42の告示があつたときは、当該海洋構築物等の設置に関し利害関係を有する者は、2の縦覧期間満了の日までに、主務大臣に、当該申請についての意見書を提出することができるものとすること。
  5. 5主務大臣は、1の許可の申請が以下のいずれにも適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならないものとすること。
    1. (1)当該海洋構築物等の設置が、当該海洋構築物等の設置が行われる海域等の海域等計画に基づく当該海域等における総合的な開発、利用、保全等を阻害しないこと。
    2. (2)申請者の能力が、当該海洋構築物等の維持管理を的確に、かつ、継続して行うとともに、使用後に適切な方法で除去するに足りるものであること。
    3. (3)その他当該海洋構築物等の設置が行われる海域等における開発、利用、保全等に重大な支障を及ぼすおそれがないこと。
  6. 6主務大臣は、1の許可を受けずに海洋構築物等の設置を行なっている者に対し、設置の中止を命じ、又は原状を回復するために必要な措置を講じることを命じることができるものとすること。

第五 環境影響評価

鉱業法に基づく海洋エネルギー・鉱物資源の開発及び新しい法律において新たに創設される区域における開発並びに海洋構築物等の設置に係る環境影響評価について、環境影響評価法に準拠して実施するか、あるいは関係法令に基づいた評価を実施するものとする。また、他の法令に基づいた開発を行う場合についても、環境影響評価については、同様とする。

第六 排他的経済水域等の調査

一 排他的経済水域等の調査の推進等
  1. 1国は、地方公共団体との適切な役割分担及び諸外国との協調の下に、排他的経済水域等の地形、海象等の把握その他排他的経済水域等の総合的な開発、利用、保全等に関する施策の策定及び実施に必要な調査の実施並びにそのために必要な観測等の体制の整備を行うものとすること。
  2. 2国は、排他的経済水域等の総合的な開発、利用、保全等に関する施策の策定及び実施に資するための情報の一元的な管理、排他的経済水域等における事業者その他の者の活動に資するための情報の提供並びにそのために必要な体制の整備を行うものとすること。
二 科学的調査の許可制度の創設等
  1. 1排他的経済水域等において科学的調査を行おうとする者は、主務大臣の許可を受けなければならないものとすること。
  2. 2主務大臣は、1の許可に、必要な条件を付すことができるものとすること。
  3. 3主務大臣は、1の許可をしようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならないものとすること。
  4. 4国の機関が行う科学的調査については、1の許可を受けることを要しないものとすること。この場合において、当該国の機関は、その科学的調査を行おうとするときは、あらかじめ、主務大臣に協議しなければならないものとすること。
  5. 5主務大臣は、科学的調査の許可を受けずに科学的調査を行なっている者等に対し、当該違反行為に係る作業の中止、当該違反行為に係る科学的調査に使用した装置若しくは物件の除去又は原状の回復を命じることができるものとすること。
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