海洋の安全保障

海洋安全保障交流の支援・促進

今日、海上交通路はグローバル経済を支える物流の大動脈として益々その重要性を増大させ、一方で、食料やエネルギー需要の急増を背景として海洋資源の開発が活発化しています。あらゆる国が関わりを深める海洋では、海上交通を脅かす海賊、島嶼の領有権や管轄海域の境界画定を巡る国家間の対立、陸域における歴史的な紛争の海洋域への影響、等々、安全保障環境は極めて不安定な状況にあります。

そのような中にあって、海洋の安定的な利活用や安全保障政策の考察或は立案のためには、広範な情報の収集と適切な分析・評価が不可欠であります。旧海洋政策研究財団では、2005年から『海洋安全保障情報月報』を、また2009年からは『北極海季報』を作成・配布すると共にホームペ-ジ上に掲載してまいりました。

2013年からは、情報のより迅速な配布をめざし、北極海情報も含めた10日ごとの「海洋安全保障情報旬報」と適宜の「海洋安全保障情報特報」をネット配信し、それを季報としてまとめた『海洋安全保障情報季報』を印刷配布すると共に、From the Oceansとしてネット掲載することといたしました。

これまでの実績

地球未来への企画"海を護る"東京宣言

"海を護る"国際会議

海洋の平和維持と自然環境・資源の保護は、21世紀の最大の課題の一つです。このような認識に立ち、軍事を中心とした従来の安全保障の概念を見直し、海洋の平和維持と海洋環境の視点を包含した総合的な海洋安全保障の概念"海を護る"を提唱し、2002年から3カ年計画でアジア太平洋諸国や国際機関から著名な専門家を招聘して国際会議を開催しました。"海を護る"概念の明確化とそれを実現するための方策について活発な議論を行い、その成果として「東京宣言」を採択しました。

宣言では、"海を護る"実現のため、情報の共有や法・施行システムの構築など10項目にわたる具体的措置を講じることを提言しています。また、提言を実行に移す政策提言グループの設置に合意し、国内外へ情報発信したところ、国際的に大きな反響を呼び起こしました。

海洋安全保障ダイアローグ事業

左:海賊及びテロ対策等に対する海上訓練の模様
右:日米シーパワーダイアローグによる提言

日本から中東に至る海上交通路は、エネルギーロードとして日本にとって死活問題です。ところが、この海域は東・南シナ海等における島嶼の領有権問題や、印パ・中東紛争などの伝統的な地域間紛争に加え、海賊・海上テロといった新しい脅威や、漁業・海底資源の権益を巡る国家間紛争が顕在化するなど、安全保障上極めて脆弱な状況にあります。この海域の安全航行を図るには、沿岸国との海洋安全保障に関する対話が重要です。とくに民間レベルで弾力的に進める意義は大きいと判断し、これまでに、インド、インドネシア、中国、トルコとの海洋安全保障ダイアローグを実施し、議論が熟せば共同声明等の合意文書を作成し、広く周知してまいりました。

日米間においても両国の有識者により、海洋国家同盟について対話を行い、2009年4月には「日米シーパワーダイアローグによる提言-海洋の安定と繁栄のための日米同盟シーパワー」をとりまとめ発表しました。今後も海洋安全保障に係わる政府間の本格的な対話促進の先駆けとなすべく、民間対話を実施していきます。

ソマリア沖海賊対策について

「ソマリア沖海賊行為への日本の対応に関する提言」を麻生太郎内閣総理大臣に提出

当財団はこれまで、海賊問題を含め海上セキュリティに関する調査研究に鋭意取り組んできました。特に、2008年からソマリア沖で海賊事件が急増してからは、政府に対する政策提言や一般国民への普及活動を強化してきました。

2008年11月14日「ソマリア沖海賊対策緊急会議」を開催し、「ソマリア沖海賊行為への日本の対応に関する提言」をとりまとめ、同年11月18日には総合海洋政策本部長である麻生太郎内閣総理大臣に提出しました。また、翌年2009年3月24日には「ソマリア沖海賊緊急報告会」を開催し、ソマリア沖海賊の実態への理解と解決に向けた問題意識を共有することができました。海賊対策に関する機運が高まる中、同年3月に国会に提出された「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」は6月に成立し、7月に施行されました。

当財団は、航行安全を含めた海上セキュリティへの一助となるよう、調査研究に取り組んでいます。

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