2013年4月、国家海洋会議(National Ocean Council)は、「国家海洋政策実施計画(NationalOcean Policy Implementation Plan)」を発表しました。これは、2009年以来オバマ政権が「国家海洋政策(National Ocean Policy)」*1の名の下に推進している総合的な海洋ガバナンス政策の具体的な実施計画として位置づけられる文書であり、米国が直面している海洋における諸課題とそれに対処するために連邦政府が取るべき具体的政策が非常に整理された形で記述されています。
国家海洋政策実施計画に続いて、国家海洋会議は2013年7月に「海洋計画ハンドブック(Marine Planning Handbook)」を採択しました。
実施計画・ハンドブックの発表によって、米国の海洋ガバナンスに関する連邦レベルの政策文書策定はひとまず完了したように思われますが、実際にそれを実行に移す際に主導的な役割を担うのはそれぞれの地域です。今後、本実施計画・ハンドブックを指針として、地域レベルでの具体的な取組がどのように進展するかが注目されます。
その他、国際的に重要な動向として、米国の北極海政策と国連海洋法条約への加入問題について、最近の動向を概観しておきます。
北極海政策については、大統領府が2013年5月に「国家北極圏戦略(National Strategy for the Arctic Region)」*2、2014年1月に「国家北極圏戦略実施計画(Implementation Plan for the National Strategy for the Arctic Region)」*3を発表しました。両文書における基本方針としては、①米国の安全保障上の利益の増進、②北極圏の責任あるスチュワードシップ(管理)の追求、③国際協力の強化、の3点が掲げられています。
国連海洋法条約については、オバマ政権は一貫して加入すべきとの立場を維持しており、上記の国家海洋政策実施計画や国家北極圏戦略の中でも、200海里以遠の海底資源開発や深海底における鉱物資源開発へのアクセス向上という観点から同条約への加入が米国の国益を増進する旨が主張されています。しかし、2012年7月に34名の上院議員が反対を表明*4して以降は、目立った進展は見られません。