【英国】海洋(基本)法令

  • 海洋及び沿岸アクセス法(MCAA)(2009):海洋管理機構(MMO)の設立、海洋計画の策定、海洋における活動の許認可、海洋保護区(MCZs)の指定等について規定。

※ なお、以下において、英国(国内)法の語は、原則として「イングランド法」を指すものとする*1

1. 海洋関連法制定の歴史

海洋関連条約に関し、英国政府は、1958年9月9日、領海条約、公海条約、漁業及び公海の生物資源の保存に関する条約及び大陸棚条約に署名しました。このうち、領海条約、公海条約、及び、漁業及び公海の生物資源の保存に関する条約については、1960年3月14日に批准しました*2。また、英国政府は、1964年5月11日に大陸棚条約を批准したため、同年6月10日に同条約は英国に対して発効しました。さらに、英国政府は、1997年7月25日に国連海洋法条約に加入したため、同年8月24日に同条約は英国に対して発効しました。

また、以下の通り、英国政府は、海洋に関連する多くの法を制定しています(表1参照)。このうち、いくつかの法律については、MCAAの施行によって所掌官庁が以前と変更されていることに留意が必要です。

表1 英国主要海洋関連国内法一覧
制定年月日法令名
1878.08.16領水管轄権法
1949.11.24沿岸保護法
1961.07.27クラウン・エステート法
1964.06.10港湾法
1967.10.27海水魚(保存)法
1967.10.27海における漁業(貝類)法
1968.12.18海における漁業法
1969.04.15大陸棚法
1970.05.29あざらしの保存に関する法律
1981.10.30野生生物及び田園地帯法
1981.07.02漁業法
1985.07.16食品・環境保護法
1987.05.15領海法
1989.07.27電気事業法(第36条)
1989.07.27大陸棚法
1992.03.16海における漁業(野生生物保存)法
2004.07.22エネルギー法(第95条)
2008.11.26都市計画法
2009.11.12海洋及び沿岸アクセス法(MCAA)
2010.03.01生息地及び種の保存に関する規則
2011.12.14公的機関改革法

(著者作成)

2. 英国国内法における海域区分

英国国内法における海域区分は、原則として国連海洋法条約(1982年)に基づいているものの(図1参照)、一部、英国国内法独自の海域区分が行われています(図2参照)。なお、前浜(foreshore)の一部並びに領海の海底及びその下は、国家の所有ではなく王室財産であり、また、排他的経済水域(以下、EEZとする。)における主権的権利の一部も王室に属するため、これらの海域における探査・開発にあたっては、クラウン・エステート法(1961年)に基づき、王室財産を管理するクラウン・エステートが許認可や管理を行っていることに留意が必要です(表2参照)。

図2 英国国内法における独自の海域区分(筆者作成)
表2 クラウン・エステートが所有あるいは管理する海域
財産(海域)概要
前浜*3英国の前浜の約半分を所有
領海の海底実質上、低潮線から12海里までの英国の海底*4
大陸棚及びその他の領域的権利海底における英国の主権的権利及び大陸棚法(1964 年)及びエネルギー法(2004年・2008年)によって規定される資源

注:The Crown Estate, "Schedule of The Crown Estate's properties rights and interests July 2013" を基に著者作成

  1. *1 例えば、英国法体系に関する入門書として以下が挙げられます。田島裕「イギリス法入門〔第2版〕」(信山社、2009年)xvii+237+72頁。
  2. *2 なお、領海条約は1964年9月10日に、公海条約は1962年9月30日に、漁業及び公海の生物資源の保存に関する条約は1966年3月20日に、それぞれ発効しています。
  3. *3 英国国内法上、原則として、前浜とは、平均高潮線と平均低潮線の間の海域を指します。但し、スコットランドにおいては、大潮平均高潮線(MHWS)と大潮平均低潮線(MLWS)の間の海域を前浜としています。なお、オークニー諸島及びシェトランド諸島においては、王室は前浜の所有権を主張していません。
  4. *4 なお、クラウン・エステートが所有する海底財産に炭化水素(石油、ガス及び石炭)は含まれません。

各国の海洋政策

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