インド
インドは北インド洋の中心に位置し、中東、アフリカ、東南アジアへの海を通じたアクセスがあります。東西南三方向を海に囲まれ、約7,500kmの海岸線を有しています。11世紀には、強力な海軍力を保有し、東南アジアを広く影響下に治めた海洋帝国を築いた国でもあります。そのため、インドが海洋へ関心を有することは、インド洋、太平洋地域への強い影響力を有します。近年のインドの海洋政策の特徴としては、インドが海洋への関心を高めつつあることがあります。その背景としては12億を超え増える人口と、経済発展に伴う食糧とエネルギー消費の増加によってインドが、海路を通じた輸出入への依存度を高めていることがあります。歴代国家安全保障顧問がすべて参加したために、準公式文書と考えられている「非同盟2.0」には、大陸国家型の軍事力から海洋国家型の軍事力への転換の方針が示されており*1、実際、国防費の内訳をみても海軍のシェアが1990年度の13%から2012年度には18%へと着実に増加しつつあります。陸海空すべて合わせた国防費全体の額が伸びている中で、海軍のシェアが伸びていることは大きな意味があり、インドの海洋重視の傾向を数字で示すものです*2。同時に、インドの海洋政策においては、日本との関係を急速に深めている点も注目されます。安全保障から経済、文化政策に至るまで関係を強化しています。日印間では、日印海洋に関する対話、日米印協議、アフリカ政策に関する日印協議が行われ、ASEANに関する日印協議の実施も決まり、日印海軍共同演習、日米印海軍共同演習も行われ、また、民間分野でも、これまであまり行われてこなかった、インド港湾施設開発計画が決まっています。ここから、近年のインドは海洋政策に積極的に取り組む傾向にあり、日本とも深いつながりがあると指摘し得ます。
- *1Sunil Khilnani, Rajiv Kumar, Pratap Bhanu Mehta, Lt.Gen(Retd.)Prakash Menon, Nandan Nilekani, Srinath Raghavan, Shyam Saran, Siddharth Varadarajan, "Nonalignment 2.0: Aforegin and Strategic Policy for India in the twenty first century", (New Delhi, Center for Policy Research, 2012), p.38 (最終確認2014年1月30日)。
- *2Ministry of Defence, Government of India, Annual Report各号より筆者作成。