当財団は2003年度から2006年度まで学校への直接支援事業等を実施し、その結果から、海洋教育の普及においては学校関係者、あるいは地域全体が海洋教育の概念や意義を共有しない限り面的な広がりは難しく、ボトムアップと同時にトップダウンで海洋教育の概念共有を進めることが重要との結論に至りました。そこで教育並びに海洋の専門家とともに具体的な検討を行い、提言として取りまとめて2008年2月19日に冬柴海洋政策担当大臣及び渡海文部科学大臣(当時)に提出し、今後の海洋教育に関する考え方についての具体的な提案を行いました。提言では、海洋教育の定義ならびにコンセプトを明らかにするとともに、実施すべき事項として教育内容の明確化、教育環境の整備、外部支援体制の拡充、人材の育成、教育研究の推進の5つを掲げました。
2008年度から3年間実施した「我が国の教育体系構築に向けた調査研究事業」では、教育学や文部科学省の専門家の協力を得て、小学校編、中学校編、高等学校編の3部からなる「21世紀の海洋教育に関するグランドデザイン」を取りまとめました。本書はそれまで曖昧だった海洋教育の概念を明文化し一貫した教育体系を明らかにするもので、学校教育における我が国初の本格的な海洋教育カリキュラムとして、各方面より注目を集めるとともに、全国の教育現場での海洋教育に対する認知度向上に寄与しました。
当財団では2012年3月、日本財団とともに、東京大学海洋教育促進研究センターの協力を得て「小中学校における海洋教育の実施状況に関するアンケート」を実施しました。アンケートでは全国の小中学校32,010校を対象に、海洋教育の実施度とその内容、学校のロケーション・地域による海洋教育の実施度の偏り、海洋教育に対する期待やニーズ、海洋基本法の認知度、東日本大震災による海洋教育への影響等について質問を行い、6,706校から回答を得ました。
2013年3月の海洋基本計画の見直しを前に、当財団は日本財団と共同で「海洋基本計画改訂に向けた海洋教育に関する提言」を取りまとめ、2012年7月31日に開催された第9回海洋基本法戦略研究会で内容を発表するとともに、同9月25日に総合海洋政策本部事務局を通じて羽田雄一郎海洋政策担当大臣(当時)宛に提出しました。提言は、制度面の強化、教育現場の環境整備、外部支援の拡充という3つの柱で構成されています。
当財団は、2013年7月に日本財団が立ち上げた海洋教育推進に関する全体戦略の議論・検討を目的とした有識者会議である「海洋教育戦略会議」に参画し、学習指導要領における海洋教育拡充のための議論を行いました。同会議は、その成果を「学習指導要領に海洋教育を位置づける必要性」と題する提言書にとりまとめ、2014年4月に文部科学省初等中等教育局、自由民主党政務調査会海洋総合戦略小委員会、内閣官房総合海洋政策本部事務局、同年5月には海洋基本法戦略研究会などの場で提起し、同年10 月14日には下村文部科学大臣に直接手交し、提言書についての理解を求めました。
上記提言や報告書のほか、学校の授業で海洋について取り上げやすくなるよう、教育現場でも利用していただける副読本、入門書などの各種書籍を作成しています。