Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第523号(2022.05.20発行)

編集後記

日本海洋政策学会会長◆坂元茂樹

◆赤潮については、沿岸域における赤潮の発生と予防対策を論じた267号や真珠養殖のアコヤガイを殺す「ヘテロカプサ赤潮」に対し生物センサーによる海洋環境観測システムを論じた458号、ビッグデータAI解析を用いた赤潮発生予察技術を論じた509号など、本誌でも幾度となく紹介してきた。今世紀、地球温暖化による海水温の上昇により新たな赤潮発生の原因藻類が生まれている。2004年にニュージーランド南島沿岸から発見されて以来、汎世界的な分布を示す渦鞭毛藻類のセリフォルミスによる赤潮発生である。
◆山口篤北海道大学大学院水産科学研究院准教授から2021年に北海道で発生したカレニア・セリフォルミスによる「道東赤潮」の発生メカニズムと防除対策についてご寄稿いただいた。高水温により水温躍層が発達した環境下では、鉛直移動能力のある渦鞭毛藻類のみが増え優占種となることで赤潮発生の条件が形成されるという。赤潮の防除去として活性粘土の散布はよく知られているが、地理的に広範囲な海域への効果的な粘土散布など課題もあるという。
◆読者のみなさんは由比ヶ浜など日本の7つのビーチにブルーフラッグの旗が掲げられていることを知っていますか。伊藤正侑子(特非)FEE Japan理事長から、1985年にフランスで生まれ海水浴場水質基準としてEU全体に拡がった海の環境認証であるブルーフラッグについてご説明いただいた。ビーチでブルーフラッグを取得するには、「環境教育と情報公開」「水質」「環境マネージメント」「安全とサービス」の4つのカテゴリーに分けられた33の基準を満たしているかどうかの国内審査と国際審査があるという。このブルーフラッグを取得する意義は、持続可能な発展を目指すSDGsと同様に、ビーチやマリーナの所在する周辺地域の持続可能な発展を促進することにあるとの指摘は傾聴に値する。
◆塙宗継山梨大学大学院総合研究部医学域基礎医学系解剖学講座構造生物学教室特任助教からは、まぐろや寿司を好むなど海産物に対する関心の高い「海なし県」である山梨県におけるウニなどの棘皮動物を題材とした海洋教育についてご紹介いただいた。「解剖でわかる海洋生物」と題して、ウニやナマコ、ヒトデなどを解剖することで、外形に多様性はあるが、五放射相称の体制と運動や呼吸のための管足(水管系)を有するという共通点を有していることを教えているという。海の幸を好む山梨県の食文化に根ざした海洋教育に期待したい。(坂元茂樹)

第523号(2022.05.20発行)のその他の記事

ページトップ