Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第98号(2004.09.05 発行)
第98号(2004.09.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生新

◆暑く眠れぬ夜の続く夏だった。物理的な暑さに加え、オリンピックでのメダル・ラッシュ、甲子園大優勝旗の津軽海峡初渡航等々、夜の巷で眠れぬ暑さを口実に、祝杯に重ねる祝杯を誘う、まさにチョー・クレイジーにホットな夏だった。スポーツにおいても、社会においても、試みと失敗は不可分であり、大切なことは、試みることによる失敗を恐れることではなく、失敗から学ぶ自己改善の実現であることを実感させられる夏でもあった。改善の喜びの大きさは失敗の苦しみの深さに比例する。

◆國井オピニオンは、40年近く継続された干拓淡水化事業を中止し、宍道湖・中海をラムサール条約の登録湿地にしようとする抜本的な政策転換に伴う両湖の生態系再生の可能性を論ずる。40年にわたった一つの試みが蓄積したものを50年、100年という時間軸で変えていく我慢強い努力が必要であり、そのような自己改善は、冷静な客観的な認識を基礎にすえるものでなければならず、学問の府である大学の社会に対する客観的な知の提供の責任は大きい。

◆日本初の「海洋大学」である「東京海洋大学」高井学長のオピニオンは、アカデミズムの世界での、海を知り、守り、利用するための新たな組織的統合と研究・教育の展開の試みを紹介する。われわれのすぐそばにある海との共生を確実にすることが21世紀を生き抜く力となるという言葉は重い。アテネ男子ヨット470級日本初の銅メダル獲得のインタビューでの、日本は海がすぐそばなのに、これまでセーリングに対する国民の関心が薄かったこと、これを機に皆がよりいっそうの関心をセーリングに向けてもらえれば、との発言が思い出される。

◆小山オピニオンは、水中文化遺産の法的保護に関する世界の動きを紹介する。古来、海は沈んだ船々の財宝と、人の命をためこむ場であった。それが海のロマンと神秘の源でもあり、シェイクスピアが「ゆたかに飾る」という言葉を「海底の軟泥が難破船のはかり知れぬ財宝で散りばめられているように」 (ヘンリー5世一幕二場) と形容した海の魅力であった。学術目的による文化財としての水中文化遺産の保護の必要性と、失われた宝物の発見による経済的インセンティヴなしにはその存在自体が具体化しないという矛盾の中で、わが国の課題も小さくはない。今後の動きに注目したい。

◆もうすぐ100号、編集子の後記執筆もあと一度。谷川俊太郎『夜のミッキーマウス』(新潮社)収録の「よげん」から、「......むしはおわれ けものはほふられ うみはうめたてられ まちはあてどなくひろがり こどもらはてなづけられるだろう... ...そしてなおひとはいきるだろう かたりつづけることばにまどわされ いろあざやかなまぼろしにめをくらまされ......」。ことばとまぼろしのめくらましを超えて、そしてなお人も海も生き続けるのである。(了)

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