Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第499号(2021.05.20発行)

編集後記

日本海洋政策学会会長◆坂元茂樹

◆世界経済フォーラムが、2021年3月に発表した国別の男女格差を示す「ジェンダーギャップ指数2021」で、日本が世界156カ国中120位、G7で最下位であったとのニュースは記憶に新しい。この男女格差は海洋科学の分野にも及んでいる。
◆白山義久京都大学名誉教授から自ら参加されたユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)による『地球規模海洋科学報告書』(GOSR)(2020年版)の提言についてご紹介いただいた。ここでは、海洋科学の分野における女性の役割を高めることが重要な項目として挙げられている。日本は海洋科学者の中で女性の占める割合がアンケートに参加した国で最下位とのこと。また、日本は海洋科学先進国として論文の実績で大きな成果を挙げているものの、研究資金の増減率でも最下位とのこと。日本の政策決定者にこの現状を認識してもらう必要がある。同時に、国際社会に目を転ずると、本報告書が指摘するように、国際社会における海洋科学の知識の偏在という問題がある。本報告書が広く読まれ、その是正に貢献することを期待したい。
◆東シナ海の大陸棚の境界画定において、日本は地理的中間線を主張しているが、中国や韓国は沖縄トラフまでを自国の大陸棚と主張し、大陸棚延長申請を2012年12月に大陸棚限界委員会に行っている。日本の海洋権益確保に資する基盤的情報の整備は喫緊の課題である。髙坂久夫海上保安庁海洋情報部企画課長より、海底地形調査に優れた機器を搭載した2020年に就役した大型測量船「平洋」と海底地質調査に優れた機器を搭載している2021年に就役した「光洋」による海洋調査体制の強化の現状についてご説明いただいた。2021年は1871年に海洋情報部の前身である「水路局」が設置されて150年目となる。一層の活躍を期待したい。
◆岩田高志神戸大学海洋政策科学部・大学院海事科学研究科助教より、バイオロギングを用いた海洋ごみの観測の可能性についてご寄稿いただいた。本誌は、動物に装置を取り付け、彼らの生態や周囲の環境情報を記録するバイオロギングについて、233号、289号、290号、352号および453号で取り上げてきた。バイオロギングは、近年、動物の生態解明のみでなく海洋の課題解決にも活用されている。海洋ごみ調査で着目された動物がウミガメである。水面で呼吸し、水中および海底で採餌や休息をするウミガメは、水面から海底まで鉛直的に分布する海洋ごみの調査に最適という。また海鳥を利用した残留性有機汚染物質(POPs)の分布状況調査も興味深い。ぜひご一読を。(坂元茂樹)

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