Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第498号(2021.05.05発行)

編集後記

帝京大学戦略的イノベーション研究センター客員教授♦窪川かおる

♦周知のように、プラスチックはほとんど生物によって分解されないため、劣化して微小な破片になっても存在し続ける。しかも水温が低い深海では劣化が遅くなる。2021年3月30日の(国研)海洋研究開発機構のホームページに、房総半島沖の水深6,000m付近の海底から大量のプラスチックごみを発見とあった。原形がわかる多くのポリ袋や37年も前の廃プラスチックがあったという。衛星データの利用も含めた海洋科学の進歩は、海面から深海底に至る物質の移動経路の予測を可能にしている。それにより、日本列島近海の深海ごみの集積場所が2か所予測されていた。今回の房総半島沖の調査海底と四国沖だという。
♦星や太陽や月、うねり、風や雲、野生動物などの自然から得られる情報を使って航路を導いていた伝統航海術の時代と現代とでは、人と自然との関係性が異なるのではないかと、海の学校主宰者の内野加奈子氏は指摘する、そして、持続可能な地球の将来に向けて自然との関係性の見直しを問う。約1,300年前にハワイに人が辿り着いたとされているが、1976年に、ポリネシアの祖先の高度な航海技術を使う伝統航海カヌー「ホクレア」で、ハワイからタヒチへの約4,000kmの航海が成功した。その後も、内野氏はホクレアの航海を通して、人と自然の関わりを問い続けている。
♦海藻おしば協会の野田三千代会長より筑波大学下田臨海実験センターでの海藻との出会いと海藻おしばの魅力、さらに海藻おしば教室の開設とその活動までを丁寧に解説いただいた。おしば作成の工夫を経て、海藻おしばアートは全国に広がり、協会は指導者の認定も行っている。海藻おしば教室は環境教育の場であり、野田氏を海藻おしばに導いた横浜康継元筑波大学教授(平成23年度海洋立国推進功労者表彰受賞)の言葉、「光はごはん 海を汚さないで」が伝えられていく。
♦東海大学海洋学部(令和2年度海洋立国推進功労者表彰)は、1962年に同大学創設者の松前重義博士により設置され、海洋に関わる総合的な人材の育成をしてきた。2004年には海の総合教育を目指して海洋文明学科を新設し、2003年の学部入学生からの学士号は「海洋学」である。調査訓練船「望星丸」の海洋実習は学部3年間の必修である。また、海洋科学博物館(水族館)をもち、研究・教育のみならず普及活動も活発である。東海大学静岡キャンパスの山田吉彦キャンパス長・学長補佐より海洋学部の歴史から展望までご寄稿いただいた。海洋国家の人材育成に期待が膨らむ。(窪川かおる)

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