Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第487号(2020.11.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆地球温暖化対策や再生可能エネルギーなど、環境分野の取り組みに特化した資金を調達するために発行されるグリーンボンドは、「持続可能な開発目標(SDGs)」の観点から注目され、2019年には2,500億ドルの発行高に成長している。こうした中、2018年10月、セーシェルが世界で初めてブルーボンドを発行した。同債券はブルーエコノミーの開発支援のために使われる。ブルーエコノミーとは、海洋資源の持続可能な利用を通じて、海洋環境の保全と海洋産業の発展の両立を目指す概念である。OECDの試算では、その市場規模は2030年までに2 倍以上に増加し、3兆ドルを超えるといわれている。
◆桑江朝比呂ジャパンブルーエコノミー技術研究組合理事長より、2020年7月15日に国土交通大臣の認可法人として設立されたジャパンブルーエコノミー技術組合の活動についてご寄稿いただいた。海洋を利用した気候変動対策には、ブルーカーボンの活用のほか海洋再生エネルギーの推進や海藻養殖の推進などがある。同組合によるブルーカーボン生態系の保全・再生事業や海洋の活用による低炭素化等の事業などブルーエコノミー事業を実践するための調査研究と社会実装実験の実施に期待したい。
◆高橋明義北里大学副学長・海洋生命科学部教授から東日本大震災を乗り越え展開されている同大学の海洋生命科学部の新たな動きについてご説明いただいた。水族館職員をめざす学生が運営する同大学の相模原キャンパスにあるミニ水族館「北里アクアリウムラボ」での学芸員コースの実習を超えた実務体験や、震災後に設立された三陸臨海教育研究センターによる地域密着型のユニークな4件の研究内容など、特色ある教育の展開については本誌をご一読いただきたい。
◆眞木まどか港区立みなと科学館連携・広報担当から2020年6月に東京都港区虎ノ門に誕生した新たな科学館「港区立みなと科学館」をご紹介いただいた。区民の科学への関心を高め、教養の向上や主体的な学びの意欲増進に寄与する港区初のこの科学館は、「まちと共に人々の成長を支える科学館」を目指すという。常設展示コーナーのコンセプトは、「“まちに息づく科学”の発見と探求」とのこと。虎ノ門というビジネス街にあり、朝9時から夜8時まで開館しているとのことなので、お近くにお勤めの読者にはぜひ一度訪れていただきたい。都心にあるメリットを活かして、人と情報の交流の「機会」の創出をめざす港区立みなと科学館の発展に期待したい。(坂元茂樹)

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