Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第473号(2020.04.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆日本を含む世界各国の新型コロナウィルスの感染拡大により、日本中が楽しみにしていた2020年東京オリンピック・パラリンピックが来年に延期になった。日本でのパラリンピック開催は障害者に対する理解と関心が高まる絶好の機会であるが、さまざまな分野での障害者に対する取り組みは地道に行われている。本誌では海上交通分野での取り組みに注目した。
◆吉田哲朗(公財)交通エコロジー・モビリティ財団理事兼バリアフリー推進部長と髙橋徹同整備支援課長代理に、2012年から始まった旅客船および旅客船ターミナルのバリアフリー施設・設備の整備に対する日本財団助成事業「海上交通バリアフリー施設整備推進」についてご紹介いただいた。高齢者や障害者等の移動の円滑化のための公共交通機関におけるバリアフリー化は、2000 年の交通バリアフリー法と建築物を対象とした1994年のハートビル法を統合・拡充した2006年のバリアフリー法によって行われている。日本には416の有人離島があるが、離島の高齢化率は40%と、日本全体の28.1%を大きく超えている。同事業により、旅客船延べ214 隻、旅客船ターミナル延べ107件の整備が行われたとのことだが、今後も有人国境離島での人々の継続的居住が可能となるよう事業の継続を期待したい。
◆2019年10月16日から20日にかけて富山で開催された「世界で最も美しい湾クラブ」世界総会について、高桑幸一美しい富山湾クラブ理事・事務局長にご寄稿いただいた。湾を活用した観光振興と資源の保全を目的に1997年に設立された国際的組織である同クラブには、フランスのモンサンミッシェル湾やベトナムのハロン湾など、26カ国1 地域から著名な44 湾が登録されているという。今回の総会では、「未来への展望~沿岸域の持続可能な発展のための環境保全~」をテーマに今後20年のビジョン「富山宣言」がまとめられたとのこと。観光振興と環境保全の両立をめざすこの取り組みについてぜひご一読いただきたい。
◆気候変動によって生活を奪われた環境難民を取り上げるドキュメンタリー番組の制作者である環境ジャーナリストの竹田有里氏から、世界一早く水没する都市といわれるインドネシアの首都ジャカルタの現状について報告をいただいた。ジャカルタが位置するジャワ島は年間6ミリ海面が上昇し、年間20センチ地盤沈下が進行しているという。貧富の差が激しいインドネシアでは、貧しい人々が行き着くスラムは北ジャカルタのムアラルンケという港町だという。この港町では海面上昇と地盤沈下で1日1回水没があるという。気候変動の問題を今そこにある危機として警鐘を鳴らす番組作りの継続に期待したい。(坂元茂樹)

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