Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第468号(2020.02.05発行)

編集後記

帝京大学戦略的イノベーション研究センター客員教授♦窪川かおる

♦受験シーズンも中盤である。志望校の教室で緊張しながら問題を解いていた入試は、推薦入試もあるなど多様になったが、令和の時代は志望校の学部改組や組織の新設あるいは大学合併もありさらに多様化する。海洋関係の学部・講座がある大学にも変化が起き、受験も情報収集だと痛感する。たとえば東京海洋大学は2019年に海洋AI開発評価センターを設置し、東海大学は2022年に海洋学部を全学改組にともない改組するなど大小の改革が続く。これらは海洋研究の学際的発展によるものであり、若者を魅了する海の学門になることを目指している。今号は、海の学門の第一線で活躍されている法学、民俗学、海洋科学の研究者を執筆者にお迎えした。
♦同志社大学の坂元茂樹教授より日中および日韓の海洋境界の主張と対立について分かり易い論考をいただいた。解決困難な状況は、海洋法条約に海洋境界画定の基準がなく、合意解決を定めていることに主因がある。合意に達しないならば国際司法裁判所に付託すればよさそうだが、付託に関する二国間の合意が必要となるため、それができないという。ところで、坂元氏は本誌の共同編集代表として、国際法学者の立場から適宜適切な後記を書かれておられることはご存知の通りである。世界の海洋問題の注目度が上がる中で坂元氏の超多忙さは加速しているが、氏を支える源を本稿の最後に発見した。
♦捕鯨は生業捕鯨と商業捕鯨の二つに大別できるという。それぞれの歴史と反捕鯨運動および海洋環境問題を抱える捕鯨全体について、人間文化研究機構国立民族学博物館の岸上伸啓教授に解説をいただいた。2019年6月末にわが国が国際捕鯨委員会を脱退し、排他的経済水域内での商業捕鯨を再開した時は、わが国だけでなく世界を揺るがした。岸上氏の解説から、温暖化や海洋汚染などによる影響調査や生態調査は鯨類でさらに必要であり、捕鯨を様々な角度から注目していく重要さが痛感させられる。
♦海水には地球上に存在するすべての元素がある。特に微量元素は地球上の生命や環境に重要な役割をもつが、それらの解明には、海洋観測に対峙する海洋科学者の真摯な努力と苦労がある。京都大学化学研究所の宗林由樹教授に、海水中の微量元素の重要さと海洋観測で元素を測定する大変さについて解説していただいた。宗林氏は第12回海洋立国推進功労者表彰を受賞されている。なぜ海水を調べるのか、必読である。(窪川かおる)

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