Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第467号(2020.01.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆アメリカのマイクロソフト社の共同創業者である故ポール・アレン氏の調査チームが、2018年から2019年にかけて第二次世界大戦で海底に沈んだ旧日本海軍の戦艦「武蔵」、「比叡」や空母「加賀」を発見したとのニュースを記憶する読者は多いと思う。海中ロボットの第一人者であり、2017年より(一社)ラ・プロンジェ深海工学会代表理事を務める浦環東京大学名誉教授に、第二次世界大戦後に五島列島沖合で海没処分された日本海軍の残存潜水艦24 艦の調査活動やその後の「呂500探索プロジェクト」についてご寄稿いただいた。本誌を一読すると、「沈没艦船はそこが墓」とする時代が終わり、遠隔操縦機ROVや自律型海中ロボットAUVという水中工学の発展により探索・回収の技術が飛躍的に向上していることがわかる。水深200mの海底に潜水艦伊47と伊58が舳先を上にして垂直に60mの高さに立ち上がっている画像は圧巻である。その探索技術の全貌についてはぜひ本誌をご一読いただきたい。
◆光ファイバーを通してデジタルの光信号で圧倒的な大容量通信を可能にしている現代の海底ケーブルの現状について、戸所弘光KDDI(株)グローバル技術・運用本部海底ケーブルグループシニアアドバイザーと土屋大洋慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授にご説明いただいた。国際的な通信を担う基幹網であり、今日の情報社会を底辺で支えている海底ケーブルが、国際電気通信連合(ITU)や国連海洋法条約というパブリック・ガバナンスと民間の業界団体である国際ケーブル保護委員会(ICPC)というプライベート・ガバナンスの協働によって保護・運用されているとの指摘は刮目に値する。インターネットの商用化が海底ケーブルにもたらした大きな変化については、本誌をお読みいただきたい。
◆「陸の考古学者」である杉山浩平東京大学総合文化研究科グローバル地域研究機構特任研究員に、四方を海に囲まれた日本の地理・地形の特徴に鑑みれば、未だ十分とは言えない水中の文化遺産の研究が、「陸の考古学」が主として形成してきた歴史像をより豊かなものに変えていくとのご提言をいただいた。古代の人々の「陸」と「海」の歴史を伝える三宅島富賀浜遺跡の発掘に携わった杉山氏による、東アジアにおける海を介したヒトやモノの交流の実態を明らかにするためには、水中の文化遺産の研究の一層の進展が必要であるとの指摘は傾聴に値する。(坂元茂樹)

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