Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第463号(2019.11.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授♦坂元茂樹

♦2017(平成29)年7月に(公財)日本財団が全国11,600人の男女に実施した「『海と日本』に関する意識調査」では、全体の7割が「海に行きたい」と回答する一方、この1年間海に行っていないと回答した人は全体の3割にのぼり、特に10代では4割が0日と回答している。10代で小学生時代に学習で海に行った経験のない人が53%にものぼっており、若者の海離れは深刻である。
♦そうした中、国土交通省海事局は「C to Seaプロジェクト」を開始した。同プロジェクトは、子どもや若者をはじめ多くの国民に海へ親しみをもってもらう取り組みである。同局船舶産業課舟艇室の岩下 聡氏にその一環としてのプレジャーボートによるクルーズ観光のモデルルート「マリンチック街道」についてご寄稿いただいた。「マリンチック」とはマリンとロマンチックを掛け合わせた造語という。2018(平成30)年には、当初の5ルートに11のルートが追加され、マリンチック街道の登録は16ルートになったという。お住いの近くが登録されている読者の方には、グルメスポットや観光スポットなどぜひ体験していただきたい。海事観光の新たな試みとして注目したい。
♦2019年海ごみゼロアワード最優秀賞を受賞した「クリーン(きれいにする)」と「エイド(助ける)」を掛け合わせた造語の荒川クリーンエイドの活動について、今村和志NPO法人荒川クリーンエイド・フォーラム事務局長にご説明いただいた。1994年以来、累計参加者数20万人となる荒川の河川清掃活動は25年に及ぶという。2019(令和元)年6月、G20大阪サミットで採択された『大阪ブルー・オーシャン・ビジョン』達成のためのモデル事例ともいうべき活動であり、「拾う人を増やして、捨てる人を減らす」この活動にエールを送りたい。
♦6年生児童や地元住民らが学校の近くの「曽根干潟」のクリーン作戦を展開し、1年で約3トンのゴミを回収しているのが、北九州市立曽根東小学校である。同校の古澤律子校長に「曽根干潟」をフィールドとした海洋教育についてご寄稿いただいた。年間を通して200種以上の野鳥が生息し、世界的希少種のズグロカモメやツクシガモ等が飛来する日本有数の越冬地であり、絶滅危惧種であるカブトガニの生息地でもある同干潟で展開されている学習の何と魅力的なことか。かつて曽根干潟に自生し1970年代に全滅した塩生植物であるシチメンソウの再生にも取り組む同校のプロジェクトの成功を祈りたい。(坂元茂樹)

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