Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第448号(2019.04.05発行)

編集後記

帝京大学戦略的イノベーション研究センター 客員教授♦窪川かおる

♦G20サミットが6月に大阪で開催される。それに先立ち、日本学術会議は各国科学アカデミーによるサイエンス20(S20)を3月6日に開催し、共同声明「海洋生態系への脅威と海洋環境の保全 ─ 特に気候変動及び海洋プラスチックごみについて─」を取りまとめた。共同声明は、同日に日本学術会議・山極壽一会長から安倍晋三総理に、次いで3月8日には原田義昭環境大臣に手交された。海洋プラスチックごみについては、ここ何年か世界的に関心が高まっているが、その起源は陸であり、それが極域や深海にまで拡散している。図らずも、世界の海はつながっていることを、またひとつしかない海(One Ocean)であることを、強く再認識させてくれる。
♦かつおは黒潮に乗って日本沿岸にやってくる。5月の初がつおは、目には青葉の新緑と相まって、活気ある季節の到来を感じさせる。また黒潮は、桜前線の北上といった日本人の季節感にも密接に関わっている。その黒潮が2017年8月末から大蛇行しているという。(国研)海洋研究開発機構アプリケーションラボの美山透主任研究員より大蛇行発生のメカニズムと予測について教えていただいた。黒潮の情報はウェブサイト「黒潮親潮ウォッチ」から短期・長期の予測を見ることができる。たとえばかつお漁師になった気持ちで黒潮情報を眺めるのはいかがだろうか。
♦風力発電の大きな風車は陸上では珍しくなくなったが、海からニョキリと立つ風車は、日本ではまだほとんど見かけない。2018年の海洋再生可能エネルギー発電に関する新しい法律の施行は、洋上風力発電の設置に追い風となると期待される。発電コストや設置地域への経済効果等の課題を丁寧に解決していくことが、運用開始につながるという。(公財)笹川平和財団海洋政策研究所角田智彦主任研究員より日本の洋上風力発電の現状とこれからを解説していただいた。
♦本誌は2000年に創刊され、のべ1,300名以上の方々にご執筆いただいた。山梨県立富士山世界遺産センター所長の秋道智彌氏は、山形俊男氏とともに、12年間にわたり編集代表を務められた。その氏が、本誌だけで終わってはもったいないとの発想から御尽力され、2019年2月に本誌の記事の拡大版となる「海とヒトの関係学」シリーズのうち1巻と2巻が発刊された。本号の記事で発刊の背景をお読みいただくだけでなく、手にとって御覧いただき、海に関わる多くの議論を知るよすがにしていただきたいと願っている。(窪川かおる)

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