Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第446号(2019.03.05発行)

編集後記

同志社大学法学部教授♦坂元茂樹

◆2019年2月22日、(国研)宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」が「リュウグウ」への第1回目の着陸に成功したニュースは、日本国民に感動をもって迎えられた。「はやぶさ2」が、この「リュウグウ」のような地球近傍に存在する小惑星内部の砂の採取に成功し、そこに有機物を発見すれば、これらが隕石として地球に落ち生命の起源に寄与したとの仮説が成立し得ることになる。サンプル採取の成功と2020年末に予定されている地球帰還の無事を祈りたい。宇宙で活動するこうした探査機の他に、日本はさまざまな観測衛星を運用している。
◆石坂丞二名古屋大学宇宙地球環境研究所教授と村上浩JAXA地球観測研究センター研究領域主幹には、2017年12月に打ち上げられ、翌年12月にデータ提供を開始した気候変動観測衛星GCOM-C「しきさい」による日本周辺の海洋観測の現況に関してご寄稿いただいた。地表面からの可視・赤外域の波長を、解像度250mで測定する衛星センサーSGILが、海表面の水温とクロロフィルa濃度の分布や海藻類の検出など海洋生態系の変化を捉える観測例が紹介されている。ぜひご一読を。
◆(公財)海と渚環境美化・油濁対策機構業務2課長の福田賢吾氏には、海洋プラスチック問題の取り組みの一環としての、生分解性プラスチックを用いたカキ養殖用パイプの実験についてご説明いただいた。カキ養殖で知られる広島湾では2億本以上のプラスチックパイプが使用されているという。カキ筏への船舶の衝突事故などによるパイプ流出量は、年間68万本といわれる。生プラ製パイプの耐久性と分解性の実験を通した、流出防止と回収の地道な取り組みに注目したい。「海洋ごみ問題に特効薬はない」との言葉を肝に銘じたい。
◆大塚耕司大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科教授に、かつて「魚庭(なにわ)の海」と呼ばれた大阪湾の再生プロジェクトについてご寄稿いただいた。大阪湾に面した阪南市をモデル地区とした、漁場環境改善の実海域実験、地産地消を促進するイベントや魚食文化を継承するための事業など、魅力ある次世代型漁業と新たな魚食文化の創出の取り組みに期待したい。「阪南モデル」を大阪湾全域に展開し、豊かな「魚庭(なにわ)の海」が再生する日を待ち望みたい。 (坂元茂樹)

第446号(2019.03.05発行)のその他の記事

ページトップ