Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第437号(2018.10.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆北海道胆振東部地震により、道内全域で大規模停電(ブラックアウト)が発生した。たまたま札幌にいたので、われわれの日常生活がいかに電気に頼っているかを再確認した次第である。そんな中、情報を取得する唯一の手段であったスマートフォンのバッテリーがどんどん減っていったのは、困りものであった。
◆(株)IHI技術開発本部総合開発センター機械技術開発部海洋技術グループ部長を務める長屋茂樹氏から、2017年夏に黒潮海域での発電実証試験を終えた海流発電システムの開発状況についてご寄稿いただいた。EEZにおける海水、海流及び風からのエネルギー生産については、国連海洋法条約第56条1項(a)で、沿岸国が有する主権的権利として認められている。世界第6位の広さのEEZをもつ日本にとっては、低発電コストの水中浮遊式海流発電システムの研究開発は、焦眉の課題である。世界初の100kW級の海流発電装置(「かいりゅう」)による発電の成功を喜ぶとともに、2020年代に海流発電システムの実用化を目指すこの計画に期待したい。
◆渡邊良朗東京大学名誉教授に、大衆魚の資源動向についてご寄稿いただいた。代表的な大衆魚であるサンマの資源量について、2003年は約400万トンあったのに、2017年は約86万トンに減少し、漁獲量も約8万トンで、前年の11万トンを下回ったことが話題になった。しかし、サンマの資源量の変動は、マイワシ資源が200倍、マサバ資源が30倍に対し、3~4倍に過ぎないとされる。マイワシやマサバの資源量が親潮水域の大きな環境変動を受けるのに対して、サンマは北太平洋全域に生息し、時空間的に広い範囲で繁殖することで、仔稚魚期の死亡リスクを分散させているからだとされる。例年、大きく自然変動する大衆魚の資源管理に関する渡邊名誉教授の論稿をぜひご一読いただきたい。
◆今年は、1868年に日本初の洋式灯台である観音埼灯台が生まれて150周年の記念すべき年である。年配者にとっては映画『喜びも悲しみも幾年月』の舞台であるが、2006年には日本のすべての灯台が無人化された。灯台をこよなく愛する「灯台女子」で、自費で年4回、『灯台どうだい?』という冊子を3,000部発行している不動まゆうさんに、文化的・観光的価値としての灯台の魅力を存分に語っていただいた。日本の近代化を支えた影の立役者である灯台に優しいまなざしを向ける不動さんの活躍にエールを送りたい。ちなみに、現在(一社)日本ロマンチスト協会と日本財団が共同で「恋する灯台プロジェクト」を行っている。不動さんのホームページとともにのぞいていただきたい。(坂元茂樹)

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