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【Ocean Newsletter】バックナンバー

第175号( 2007.11.20 発行)
第175号(2007.11.20 発行)

編集後記

秋道智彌●ニューズレター編集委員会編集代表者(総合地球環境学研究所副所長・教授)

◆10月末、鹿児島純心女子大学(鹿児島県・川内市)でおこなわれた川を考えるシンポジウムに参加した。川内川は周知の通り、昨年7月大きな水害に見舞われた。3日間で1,700mmというとんでもない量の降雨があった。地元の国土交通省の調査で、避難勧告がでても、まさかあれほどまでの水が押し寄せてくるとは思わなかった人が半数ちかくいたという。過去になかったということと、今回の大水との関係はつまびらかではないが、予測不可能な事態が起こったことはたしかなようだ。復旧・復興が進むなかで、地区に焦点をあてた防災の取り組みが進んでいるという話をきいた。集住地区と、家屋が分散している場合とでは電話などによらない緊急連絡の方法も自ずと変わってくるにちがいない。お年寄りの住む家、寝たきりの人がいる家など、地区住民でないと分からない情報もあるにちがいないからだ。
◆ローカルな災害対応がなされる前の、さまざまな防災情報の研究が進んでいる。本誌で山口悟史氏が、防災シミュレーション・システムの開発について興味ある紹介をされている。生々しい現実の危機管理をコンピュータによる手法で広域的に進めようという試みである。もっとも、氏が述べておられるように、水害を未然に解決するためには、コンピュータの専門家だけでなく行政、企業、個人の協力が不可欠である。危機への共同管理体制の確立は、技術面だけでなく情報にあることを思い知らされる。
◆日本では集中的な豪雨により水害の発生することがおおい。しかし、東南アジアのモンスーン地域では乾季と雨季が明瞭であり、乾季にはほとんど雨が降らないが、雨季になると川の水位は数メートルも変わる。川が氾濫して居住地や道路、水田はすべて冠水する。数ケ月の間は否が応でも水に浸かった生活をしなければならない。カンボジアのトンレサープ湖で水上生活を営む人びとは、雨季と乾季に応じて居場所を船で移動する。乾季になると湖の水位が低下するので湖の中央部へと移動し、雨季には沿岸部へと船ごと住居を移すのである。洪水と人びとのつきあいは長い間に形成されてきたものであり、そこには洪水にたいするあきらめにも似た、暮らしとはこんなものだという思いがあるように見受けられる。
◆雨が少なすぎると困るし、多すぎても困る。アジアでは、水害とともに水田の実りをもたらす雨はさまざまな信仰をはぐくんできた。東南アジアのナーガ(蛇)信仰や日本の水神信仰がそうだ。災害と向き合ってきた人間の営みと信仰を踏まえ、アジアにおける現代の災害を考えることも重要ではないだろうか。  (秋道)

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