大陸棚限界委員会に対する各国の申請状況

イギリスの申請(2009年)

イギリスの申請(2009年)

2009年3月31日、イギリスは、国連事務総長を通じ、大陸棚限界委員会に対して、イギリスのハットン・ロッコール(Hatton Rockall)海域の大陸棚の延長申請を提出しました。イギリスが申請を提出したことは国連事務総長によって、全国連加盟国に通知され、申請のエグゼクティブ・サマリーが公表されました。デンマーク及びアイスランドが自国の見解を示す文書を提出しています。

イギリスは、エグゼクティブ・サマリーの中で、以下の点を述べています。

  1. 申請は、イギリス北西部のハットン・ロッコール海域の大陸棚の限界に係わる部分申請である。
  2. アイルランドとの大陸棚の境界画定は、1988年に合意に至っている。
  3. ハットン・ロッコール海域において、デンマーク及びアイスランドは、イギリスと重複する主張を行っており、この問題を解決するため、長年に渡って協議が行われている。イギリスは、合意に至るまで継続して協議に参加する予定であるが、申請の締切りに間に合うように、本申請を今、提出する。
  4. アイルランドの外務省及び通信・エネルギー・天然資源省の公表されていない地球物理データを利用させてもらったことについて、両省に感謝する。

デンマークは、提出した文書(2009年5月27日付)において以下の点を述べています。

  1. イギリスのエグゼクティブ・サマリーによると、イギリスはフェロー海台(Faroe Plateau)について権利を有すると考えているが、デンマークは、自国の申請提出期限である2014年12月16日(*1)までに、フェロー海台についての部分申請を提出する予定である。デンマークは、イギリスとアイルランドとの大陸棚境界画定についての1988年の合意が、フェロー海台についてのデンマークの権利に影響を及ぼさないことを確認する。
  2. デンマークは、イギリスの申請に対する審査及び勧告が、同じ海域についてのデンマークの将来の申請に影響を与える、と考える。したがって、同じ海域についてデンマークが将来提出する申請と同時にのみ審査されるべきである。デンマークが更なる通告をしない限り、デンマークは、イギリスの今回の申請に同意を与えないことを宣言する。
  3. デンマークは、ハットン・ロッコール海域に関するアイスランド、アイルランド、イギリス及びデンマークの4カ国協議に引き続き参加していくことを確認する。

(*1)デンマークが国連海洋法条約を批准したのは2004年11月16日で、その1ヶ月後の同年12月16日に効力が生じているため、それから10年後の2014年12月16日がデンマークの申請提出期限となります。

(*2)デンマークは、2010年12月2日に、フェロー・ロッコール海台エリアに関する大陸棚延長申請(部分申請)を提出しました。同日付で、デンマークは国連事務総長宛口上書を提出し、その中で、このエリアの関係国の申請を大陸棚限界委員会が同時に審査することが国連海洋法条約附属書Ⅱ第9条の意味における「影響」を及ぼさないための適切な解決策であると考える旨を述べています。

アイスランドは、提出した文書(2009年5月27日付)において以下の点を述べています。

  1. ハットン・ロッコール海域は、アイスランドの大陸棚の一部であるが、デンマーク、アイルランド及びイギリスが重複した主張を行っており、紛争の下にある。
  2. アイスランドは、大陸棚限界委員会によるイギリスの申請の審査は、この海域のアイスランドの大陸棚に対する権利に影響を及ぼす、と考える。したがってアイスランドは、大陸棚限界委員会によるイギリスの申請の審査に同意を与えない。
  3. アイスランドは、2009年4月に部分申請を提出しているが、ハットン・ロッコール海域を含めていない。これは、ハットン・ロッコール海域に関して重複した主張を行っている関係国間の境界画定の問題に予断を与えないためであるが、アイスランドは、後の段階で、この海域に関して別個の申請を提出する予定である。

イギリスの申請のエグゼクティブ・サマリー、デンマーク及びアイスランドが提出した文書は、下記サイトで閲覧することができます。

2009年8月~9月に開催された第24回大陸棚限界委員会会合において、イギリス代表は、申請の内容についてのプレゼンテーションを行いました。2011年3月~4月に開催された第27回会合において、イギリスの申請が審査待ちの行列の先頭に来たため、小委員会の設置について検討された結果、審査を行うために必要な関係国の同意が得られていない状況であるとして、小委員会の設置は見送られました。

 

ハットン・ロッコール海域周辺図

ハットン・ロッコール海域周辺図

出典:米国商務省海洋大気庁地球物理センター(NGDC)提供のETOPO1 データ
Amante, C. and B. W. Eakins, ETOPO1 1 Arc-Minute Global Relief Model: Procedures, Data Sources and Analysis, National Geophysical Data Center, NESDIS, NOAA, U.S. Department of Commerce, Boulder, CO, August 2008.

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