大陸棚限界委員会に対する各国の申請状況

イギリスの申請(2008年)

イギリスの申請

2008年5月9日、イギリスは、国連事務総長を通じ、大陸棚限界委員会に対して、イギリスの海外領土である南大西洋上のアセンション島の大陸棚の延長申請を提出しました。イギリスが申請を提出したことは国連事務総長によって、全国連加盟国に通知され、申請のエグゼクティブ・サマリーが公表されました。オランダ及び日本が自国の見解を示す文書を国連事務総長に提出しました。

イギリスは、エグゼクティブ・サマリーの中で、この申請はアセンション島の大陸棚のみに関する部分申請である、また、この申請に含まれる大陸棚に関し他国との紛争は存在しないと述べています。

イギリスの申請のエグゼクティブ・サマリーは、下記サイトで閲覧することができます。

上記サイトには、イギリスがこの他に行う予定の申請に関して自国の立場を述べた文書(PDF)が掲載されています。この文書において、イギリスは以下の点を述べています。

  1. 2009年5月の提出期限より前に、アセンション島の他にもいくつかの部分申請を行う予定である。
  2. ただし、南極に関しては、南極条約及び国連海洋法条約により共有されている原則と目的を想起した上で、また、南極条約に基づく南極の特別な法的・政治的地域を考慮した上で、南極地域の大陸棚に関し限界延長申請を行うかどうかは、各国に委ねられている。申請する場合、①CLCSによって一定期間審査されないが南極地域の申請を行うか*1、または②南極地域の大陸棚を含まない形で部分申請を行い、後の段階で南極地域の申請を行うかであり、②の場合は国連海洋法条約附属書II第4条及び締約国会合の決定により定められている提出期限があるにもかかわらず、申請することができると考える。
  3. 以上から、イギリスが今後行う部分申請には、南極地域の大陸棚に関する申請は含めないが、後の段階で申請を行うことができる。

この南極に関するイギリスの立場表明に対して、オランダ及び日本が自国の見解を示す文書を提出しています。(いずれも、上記のイギリスの申請に関するサイトに掲載されています。)
オランダは、ニュージーランドの申請に関して自国が提出した口上書に言及し、南極条約において南極地域における領土主権・領土についての請求権が凍結されていることを確認した上で、この点がイギリスの今回の申請にも同様に適用される旨を述べています。
日本は、南極条約において南極地域における領土主権・領土についての請求権は認められていないことを想起し、南極大陸に近接する海底及びその下に対するいかなる国家の権利も認めない旨を述べています。

2008年8月~9月に開催された第22回大陸棚限界委員会の会期中に、イギリスの代表がプレゼンテーションを行い、申請の内容についての説明を行いました。2009 年3 月~4 月に開催された第23回大陸棚限界委員会の会期中にイギリスの申請を審査する小委員会が設置され、審査が開始されました。

小委員会で検討された後、第25回大陸棚限界委員会の会期中の2010年4月15日に大陸棚限界委員会はイギリスに対する勧告を行いました。勧告の要約版が、大陸棚限界委員会の上記ページに掲載されています。

なお、イギリスは、2011年1月11日付で事務総長宛口上書を発出し、2010年4月15日に発出された勧告について失望(disappointment)を表明すると述べると共に、事務局に対し、この口上書及びイギリスが2010年4月12日に大陸棚限界委員会会合において行ったプレゼンテーションを要約したペーパーを大陸棚限界委員会のサイトに掲載するよう要請しました。これを受け、大陸棚限界委員会は、2011年3月~4月に開催された第27回会合において、このイギリスからの口上書に留意した上で、勧告が国連海洋法条約第76条及び条約附属書Ⅱに厳格にもとづいて作成されたことを確認すると同時に、条約附属書Ⅱ第8条に、沿岸国が委員会の勧告について意見を異にする場合、合理的な期間内に、改定した申請または新たな申請を行うことができる旨規定されていることを想起しました(CLCS/70, パラグラフ67)。

*1 この方式で南極地域に関する申請をCLCSに提出したのが、オーストラリアです。(「オーストラリアの申請」参照。)

 

アセンション島の位置

アセンション島は大西洋上にあります。

イギリスの申請

出典:米国中央情報局(CIA)発行のThe World Fact Book 2008 オンライン版

 

アセンション島の地球科学的特徴

アセンション島は大西洋中央海嶺上にあります。
下記のETOPO2データで、大西洋の真ん中に南北に延びている、薄い水色の筋状のものが大西洋中央海嶺です。

イギリスの申請

出典:米国商務省海洋大気庁地球物理データセンター(NGDC)提供のETOPO2

TOPへ戻る