ブラジルの申請
2004年5月17日、ブラジルは、国連事務総長を通じ、大陸棚限界委員会に対して申請を提出しました。ブラジルが申請を提出したことが国連事務総長によって全国連加盟国に通知され、申請のエグゼクティブ・サマリーが公表された後、米国が自国の見解を表明する文書を国連事務総長に提出しました。
- 米国は、ブラジルの申請のエグゼクティブ・サマリーに含まれている堆積物の厚さのデータの一部に関し、(1)公的に利用可能なデータ(例えば、深海底掘削プロジェクトや雑誌論文、米国商務省海洋大気庁地球物理学データセンター(NGDC)作成の世界海洋堆積層データベースのデータ)との齟齬があること、及び(2)ブラジルがビトリア・トリンダージ海嶺としている部分に関し、国際水路機関(IHO)及び政府間海洋学委員会(IOC)大洋水深総図(GEBCO)海底地形名称小委員会では、「海嶺」ではなく「海山列」と呼ばれている、と述べています。
ブラジルの申請のエグゼクティブ・サマリー及び米国が提出した文書については、大陸棚限界委員会の下記のページで見ることができます。
米国からの文書に関し、大陸棚限界委員会は、申請国以外から表明された見解を考慮できるのは、近隣諸国との紛争又はその他の未解決の領土若しくは海洋に関わる紛争の時のみであるとして、米国が表明した見解を考慮しないことを決定しました。(CLCS/42, para.17)
2004年8月~9月に開催された第14回大陸棚限界委員会の会期中に、ブラジルの代表がプレゼンテーションを行った後、小委員会が設置され、審査が開始されました。その後、ブラジルは自国の申請への追加データを提出しました。これを受け、大陸棚限界委員会は、沿岸国が申請を提出した後、小委員会が検討を行っている最中に追加的なデータを提出することは国連海洋法条約及び関連規則に照らして認められるのかという点につき、国連の法律顧問の法的見解を求めたところ、認められるという見解が出されました(CLCS/46)。
小委員会の検討の後、第19 回大陸棚限界委員会の会期中の2007年4月4日に大陸棚限界委員会はブラジルに対する勧告を行いました(CLCS/54)。勧告の内容は、現在のところ、公開されていません。
なお、2011年2月15日付でブラジル政府発大陸棚限界委員会宛の書簡が発出され、ブラジルは今後、改訂された申請を行う予定であるので、2007年4月4日付の勧告の要約が公表されないことを希望すると伝えました。これに対し、大陸棚限界委員会は、第27回会合(2011年3月~4月開催)において、手続規則にもとづいて行動することを決定すると同時に、ブラジルに対する勧告の要約の扱いについては次回会合に先送りすることとしました
(CLCS/70, パラグラフ59)。
第28回会合(2011年8月~9月開催)において、ブラジルの申請を審査した小委員会のカレラ委員長が、勧告要約の改訂版について説明を行い、これにもとづき審議した結果、大陸棚限界委員会は、勧告の要約を採択しました。この要約は、手続規則にもとづき、ブラジルと国連事務総長に送付され、国連事務総長によって公表されることになります
(CLCS/72, パラグラフ55)。
ブラジル周辺図
出典:米国商務省海洋大気庁地球物理データセンター(NGDC)提供のETOPO2のデータ