島と周辺海域

背景と目的

島嶼国は、国連海洋法条約等により形成された200海里の排他的経済水域等の海域管理体制の下、島を拠点として設定される排他的経済水域において、天然資源を開発、利用する権利を有すると同時に、生物資源を含む海洋環境の保護・保全の責務を有しています。特に、太平洋においては多くの島嶼国が存在し、広大な排他的経済水域がこれらに帰属しているため、海洋の管理という観点から太平洋島嶼国は極めて重要な位置を占めているといえます。

今日、島嶼国の多くは、様々な問題に直面しています。島嶼国における環境問題は、島における人口の沿岸部集中や海岸地域の不適切な利用・工事などの土地利用問題、ゴミ・生活排水の処理問題などの地域的な問題とも密接に関連しています。また、島嶼国は、上記のとおり、国連海洋法条約の下で認められた排他的経済水域等の周辺海域について、海洋環境の保護・保全の責務を含めていかに適切に管理していくかという問題を抱えています。さらには、地球規模の気候変化や局所的な気候変動の影響による海面上昇は、洪水・浸水また作物に対する塩害等の陸域への被害だけでなく、島そのものが水没する恐れを引き起こし、海面水温の上昇は、島の生活基盤であるさんご礁への被害などを発生させています。

上記のような問題には、気候変化・変動への対応など島嶼国のみでは十分な対応を取ることが困難であるものが含まれており、その解決策の検討には国際的な協力が求められます。約7千の島を有する我が国自体も島嶼国であり、離島などにおいて同様の問題を抱えていることから、これらの国々と協力・協調して問題意識や知識を共有し、今後の対応の方向性の検討に取り組むことが必要です。

このような問題意識から、当研究所は、2009年度(平成21年度)から2011年度(平成23年度)まで第1期の「島と周辺海域の保全・管理に関する調査研究」を実施し、「島の保全・管理」、「島の周辺海域の管理」及び「気候変化・気候変動への対応」の3つの視点から政策提言を取りまとめました。その政策提言は、当研究所が主催した「島と海に関する国際セミナー」において島嶼国側の当事者も参加して審議され、オーストラリア国立海洋資源安全保障センター(Australian National Centre for Ocean Resource & Security, ANCORS)との共同政策提言「For The Better Conservation and Management of Islands and Their Surrounding Ocean Areas(島と周辺海域のより良い保全と管理)」(以後、国際版共同政策提言と記す。)として取りまとめられたものです。この国際版共同政策提言は、2012年(平成24年)6月にブラジル・リオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議」(リオ+20)での今後10年の持続可能な開発の行動計画の策定プロセスにおいて、国連経済社会理事会の特別協議資格を有するNGOである海洋政策研究財団(現 海洋政策研究所)から、リオ+20事務局に対し2011年(平成23年)10月に提出されました。また、国内向けに作成された「島と周辺海域の保全・管理」に関する政策提言(以後、国内版政策提言と記す。)を2012年(平成24年)春に我が国の政府等の関係者や国民一般に向け発表しました。

その後、リオ+20においては、その成果文書であるThe Future We Want(私たちが望む未来)において、持続可能な開発に向けた国際社会の取組について一定の方向性が盛り込まれるとともに、Small Island Developing States(SIDS:小島嶼国開発途上国)を記述した章の中で、2014年に小島嶼開発途上国に関する第3回国際会議を開催することが合意されました。また、我が国では、2013年(平成25年)4月26日に閣議決定された新たな海洋基本計画において、海洋に関する国際協力の一環として、「太平洋島嶼国等との間で、島の保全・管理、周辺海域の管理、漁業資源の管理、気候変動への対応など、我が国の島と共通の問題の解決に向けて連携・協力を推進する。」ことが盛り込まれました。

これらを踏まえ、本事業では、太平洋島嶼国やその周辺の国々と協力し、上記国際版共同政策提言や国内版政策提言、リオ+20の成果文書等に基づき、島と周辺海域の持続可能な開発に向けた政策の一層の具体化を図ります。また、今後開催される国際会議の成果文書等に、その内容を反映させるよう務めます。

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