海洋に関する情報発信

【Ocean Newsletter】最新号

第425号(2018.04.20 発行)

海洋と気候の行動ロードマップ(ROCA)イニシアチブ

[KEYWORDS]海洋の役割/ROCA/気候変動政策
グローバル・オーシャン・フォーラム代表、デラウェア大学教授◆Biliana Cicin-Sain
元グローバル・オーシャン・フォーラム代表補佐◆Meredith Kurz

国際社会は今、海が気候調整のうえで重要な役割をもつものであること、海の生態系に対して気候変動がきわめて深刻な影響を与えていることに関して、その認識を一層高めつつある。
そうした中、海洋・沿岸域に関する諸問題を持続的かつ科学的根拠に基づく気候変動政策の実施を促すことをめざして、「海洋と気候の行動ロードマップ(ROCA)」イニシアチブが創設された。
海洋と気候の問題には、未だきわめて多くの課題が着手されないままに残されており、ROCAイニシアチブは、パリ協定によって生まれた行動の機運を失速させず、これを確実に継続させていく。

ROCAイニシアチブの創設

国際社会は今、海が気候調整のうえで重要な役割をもつものであること、その海の生態系に対して気候変動がきわめて深刻な影響を与えていることに関して、その認識を一層高めつつある。そうした中で、海洋と気候の関係に関する認識をさらに高めること、また、海洋・沿岸域に関する諸問題を適正に考慮する持続的かつ科学的根拠に基づく気候変動政策の実施を促すことをめざして、「海洋と気候の行動ロードマップ(ROCA)」イニシアチブが創設された。2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(UNFCCC COP21)におけるパリ協定の成立に至るまで、UNFCCC成果文書中に、あるいはその討議の中で海洋についての言及がなされることはほとんどなく、陸上生態系、特に森林分野が気候緩和策に関して大きな注目を浴びてきた。気候変動政策における海洋に関する事項の欠如は、海洋と気候の間の関連性への認識の不在を意味するものであり、総合的な緩和・適応政策のためには、海洋および沿岸域を考慮することが強く求められる。

海の役割

気候に関しては、海が中核的な役割をもつことは明らかである。海は、1800年代後半以降に排出された人為起源の二酸化炭素の28%を吸収し世界の酸素の半分以上を生成するなど、気候調整の主要な担い手であり、世界の人口の少なくとも10%が健全な漁業・養殖に依存して生計を立て、何億という数の人々が魚を動物性たんぱく質の主要な摂取源として生きているのである。世界に183ある沿岸・島嶼諸国は、海水温度の上昇および酸性化による漁業への負の影響、海面水位の上昇による海岸線の変形・浸食、熱帯低気圧の頻発化と強大化などの特有の問題に、今直面している。たとえば日本の場合、現状維持の排出シナリオでは人口の46%が海面水位の上昇および海岸浸食による影響を受けることが予測されているが、同様の問題は小島嶼開発途上国(SIDS)において特に顕著で、気温上昇を1.5℃以下に留める徹底的な排出量削減策が実現しない限り、陸上部分を完全に失うことが危惧される国もある。

海洋政策をめぐる近年の動き

最近数年間に、UNFCCC締約国会議において海洋政策に関心を持つ諸国の間に連携が広がり、気候変動政策で海洋を考慮することの重要さに国際社会の注意を向けさせることをめざして連合が形成された。このグループが存在感を発揮したのは、2015年パリにおいてであった。46のパートナー機関がCOP21で、「オーシャンズ・デー」を開催し、400人以上が参加したのである。登壇者たちは、気候の調整においては海洋が担っている極めて重要な役割と、生存を健全な海に依存している地域社会に気候変動が与える影響への対応策を講じることの差し迫った必要性を強調した。オーシャンズ・デーその他数々のイベントの成功が大きな力となり、パリ協定前文に海洋生態系への言及が盛り込まれ、さらに、UNFCCCのハイレベル気候チャンピオンは海洋を今後の優先行動分野の一つに包含した。
COP21オーシャンズ・デーに集った専門家たちは、パリ協定の野心を前進させることが緊急に求められるとの認識に立って、37名の執筆者が協力して、COP21後の5年間にとられるべき海洋および気候に関する行動のビジョンに関する政策提言書『海洋と気候に関する戦略的行動ロードマップ 2016~2021』(図参照)を執筆した。この戦略的行動ロードマップは、「気候における海洋の中心的役割」、「緩和」、「適応」、「移転」、「資金調達」、「能力開発」の6つの部分によって構成されている。各セクションとも、UNFCCCにおける取り組みの現状、対策に関する資金的状況、UNFCCCの枠内および枠外でとり得る持続可能かつ科学的根拠に基づいた政策を進める機会を提示している。
このロードマップの作成に続いて、メンバーの努力が結実し、モロッコのマラケシュで開催されたCOP22におけるオーシャンズ・アクション・デーでROCAイニシアチブが打ち上げられた。このイニシアチブのミッションは、UNFCCC加盟諸国、NGO、学術機関、市民団体、公益団体等からなるパートナーの協働によって、ロードマップに盛り込まれた提言の実行を促進することである。ROCAイニシアチブは、グローバル・オーシャン・フォーラム、ユネスコ政府間海洋学委員会 (IOC-UNESCO)、笹川平和財団海洋政策研究所 (OPRI-SPF)、青い海財団(Oceano Azul Foundation、ポルトガル)、デラウエア大学が中心となってとりまとめている。ROCAイニシアチブは、ロードマップの提言の実施をめざして報告書の作成を行うほか、持続可能な開発目標14の実施を支援する国連ハイレベル会議「国連海洋会議」(本誌第416号『初の国連海洋会議とSDG14』参照)において特に重要な役割を果たし、ROCAイニシアチブのパートナーは、サイドイベントを主催して海洋と気候の強い関係を強調した。

気候変動政策分野における海洋への持続的取り組みを

海洋と気候の問題には、未だきわめて多くの課題が着手されないままに残されており、ROCAイニシアチブは、パリ協定によって生まれた行動の機運を失速させず、これを確実に継続させていくことにその使命がある。2016年から2017年にかけての記録的な海面温度の上昇、大規模なサンゴ礁白化現象、さらに強大な暴風雨の発生などが見られたことによって、ROCAイニシアチブのミッションの緊急性が一層高まってきた。気候変動政策の分野で海洋問題への認識を維持することにより、UNFCCC内外において海洋の問題を適切に包含しようとするROCAイニシアチブにはすでに前進が見られる。ボンにおけるCOP23議長国のフィジーは、「2019年までの海洋と気候変動に関する作業プログラム」策定を支える「オーシャン・パートナーシップ・パスウェイ」の立ち上げを表明した。ROCAイニシアチブは、海洋・沿岸域の持続可能な管理が総合的な気候変動緩和・適応策を行ううえでのカギであると考える国際、国家、地方自治体レベルの気候変動に関する政策決定者の意欲が今後も継続し、一層高まることを望んでいる。(了)

  1. 気候チャンピオン(Global Climate Action Champions)=2016年から2020年までの間、COP議長により2名ずつ任命され、政府や様々な非政府主体による気候変動対策のためのイニシアティブの強化・立ち上げを促進するための様々な活動を行う。
  2. 本稿は英語でご寄稿いただいた原文を事務局が翻訳まとめたものです。原文は本財団HP(https://www.spf.org/opri/projects/information/newsletter/backnumber/2018/424_1.html)でご覧いただけます。
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