Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第413号(2017.10.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆来年度から始まる第3期海洋基本計画の策定にあたっては、海洋の産業利用の促進、海洋環境の維持並びに海洋人材の育成が、海洋の安全保障とともに、主要なテーマとなっている。
◆2017年4月、東京海洋大学は海洋環境科学科、海洋資源エネルギー学科の2学科からなる海洋資源環境学部を新たに開設した。その狙いについて、岡安章夫初代学部長にご寄稿いただいた。EEZを含めた海域の総合的利用のためには、それを支える海洋産業の人材育成がまさに焦眉の課題である。海洋資源環境学部の名称が示すように、ともすればこれまで別の分野として扱われてきた海洋資源の開発と環境保全の問題を総合的視点から学ぶ、新たな海洋スペシャリストの人材育成を目指す東京海洋大学の試みに期待したい。
◆駅弁として高い人気を誇る「いかめし」が、世界的なイカの不漁で20%を超える値上げで780円になったというニュースが大きく取り上げられたことをご記憶の方も多いだろう。函館頭足類科学研究所所長の桜井泰憲氏からは、大不漁となったスルメイカを通して診る重要海域(EBSA)としての知床の海についてご寄稿いただいた。北半球で流氷に覆われる南限の知床半島と周辺海域は世界自然遺産地域に登録され、海域―陸域生態系の生物多様性の豊かさを誇っている。「風が吹けばイカが減る」という再生産仮説については読んでいただくとして、地球温暖化に伴う海水温の上昇がもたらす日本周辺海域の変化が、イワシ・サバ類やスルメイカの漁獲に影響を与え日本の食卓を直撃しているメカニズムの解明は、知的好奇心をそそる内容になっている。
◆南極観測隊の輸送を担当する砕氷艦「しらせ」に初の女性自衛官として乗務した新田千秋3等海曹と成田枝里香3等海曹から、航海と昭和基地での協力作業についてご寄稿いただいた。昭和基地沖に辿り着く航海の厳しさ、昭和基地での協力作業の過酷さの中で生き生きと任務をこなす女性自衛官の活躍に喝采を叫びたくなる。男性自衛官との手の大きさや体格の差を逆に利用して仕事をこなす彼女らが記す、「男女の差別はいけませんが、区別は必要なことだと考えて仕事をしています」の言葉は、さまざまな場所で活躍している女性へのたしかなエールに思える。ぜひご一読を。 (坂元)

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