Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第412号(2017.10.05発行)

編集後記

東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる

◆秋の味覚の代表「サンマ」は、夏休みの散財の後には嬉しい魚である。特有の香ばしさと、皿から頭や尾がはみ出る豪華さも嬉しい。今年の水産庁のサンマ長期漁海況予報によれば、東経160度付近より東方の海域での分布量が前年より少ないため、漁期後半のサンマの来遊量が低下するという。さらに外国船による漁獲の増加がある。また水温変化がサンマの回遊経路を変える。すなわち不漁になる。食卓には、海洋で起きているさまざまな問題の"証拠"がやってくる。サンマの回遊やサケの母川回帰は海水温に依存する部分がある。さらに温暖化は海洋の酸性化と連動し、海は危機に陥る。これを未然に防ぐため、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度削減の技術開発が進められている。
◆化石燃料からのCO2排出を減らすため、二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術の実証試験が苫小牧で展開されている。国際的には、全球で年間330億トン排出されているCO2の1/6を、この技術によって回収することが目標とされている。田中 豊氏からこの事業を詳説いただいた。日本の海底下貯留事業は、世界初の陸域から海底下への圧入、圧入時の科学的観測データの取得などで、その技術と運用が世界から注目されている。見学会もあるので、日本の新技術の現場に足を向けることもできる。
◆自然災害やコンピュータの故障など多くの脅威に晒されている現代社会である。その社会に脆弱性があると災害が発生するという考え方がある。小野憲司氏から事業継続計画(BCP)の解説と港湾BCPの意義を教えていただいた。港湾の機能は、海上輸送と陸上交通網の両方に関わる物流インフラであり、その停止は経済活動に大きくしかも長く影響する。港湾BCPは港湾事業に従事する多数の企業・組織の集合体の危機管理であり、さらに繋がる末端の顧客まで考えた現実的で効果的な危機対応計画になるという。日本の屋台骨に注目していきたい。
◆東日本大震災の年に全国の小学校で水産業について学んだ子どもたちは、高校生になる。2017年に95周年となる焼津水産高校は、未来の水産業を背負う若者の育成に邁進する学年定員200名の大規模校である。古木正彦校長から熱意に溢れる取り組みをご紹介いただいた。まずカツオ一本釣りができる実習船であり、漁業、食品、流通の専門人材の育成への自信であり、さらにはグローバル化である。全国の水産高校でも熱心に教育が進められている。すべての水産高校生にエールを送りたい。 (窪川)

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