Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第409号(2017.08.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆川村善久氏からは、(国研)海洋研究開発機構の研究船「かいれい」によるミクロネシア連邦海域で実施された海底地形調査についてご寄稿いただいた。国連海洋法条約第312条は改正手続を定めているが、その改正手続によることなく、2008年の締約国会合で延長大陸棚の情報提出期限を延長する「事実上の改正」が行われた。同条約附属書Ⅱ第4条では、「この条約が自国について効力を生じた後できる限り速やかに、いかなる場合にも10年以内に」科学的および技術的データの提出を義務づけている。しかし、技術力に乏しい途上国では、この条件を満たすことは困難だとして、2009年5月12日までに予備的情報を国連事務総長に提出すれば、締切を満たしたものとする決定がなされた。ミクロネシアは同年5月5日に、2つの海底について予備的情報を提出した。今回、「かいれい」は、ミクロネシアに代わって、大陸棚限界委員会に提出する海底調査データの取得のための調査航海を実施したとのことで、海洋における新たな国際協力のあり方として注目される。
◆船舶交通が混雑する港や航行の難所とされる水域には、水先区(全国35区)が設定され、水先区を航行する船舶を安全かつ速やかに航行、入出港させるために水先案内人が活躍している。那覇水先区で水先案内人を務めた上里武氏には、水先人の仕事の内容と、現在抱えている後継者不足の現状について論じていただいた。
◆日本は人口当たりの水族館数が世界一の水族館大国である。夏休みに避暑がてら、お子さんを水族館に連れて行きたいと考えている読者も多いことであろう。そんな人にお勧めの水族館が名古屋港水族館である。同水族館は、屋内にウミガメが産卵するための人口砂浜をそなえた世界初の水族館として知られている。産み落とされた卵や赤ちゃんガメに触れて、命の大切さを学ぶ絶好の機会である。館長の日登 弘氏からは、この名古屋港水族館におけるウミガメ類の繁殖とベルーガの繁殖の研究成果について論じていただいた。砂中温度29℃を境に性別が決まるとされるウミガメ類には、「生命の神秘」を感じざるを得ない。  (坂元)

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