Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第402号(2017.05.05発行)

編集後記

東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる

◆女性が初めて航海に出た1766年、フランス海軍の船上でジャンヌ・バレーは男装だった。それから1世紀後、1888年設立の米国ウッズホール海洋生物学研究所では賑やかに女性海洋科学者たちが育っていた。そして、本誌は4月から坂元と窪川の男女が船橋に立ち、金毘羅様のご加護を祈念して出航した。応援をお願い申し上げたい。
◆東経137度線。志摩半島から黒潮と北赤道海流を横切りニューギニア沖まで針路は南。これを半世紀、50年間継続してきた長期観測の成功は、増澤譲太郎の先見と関係者の初志貫徹の気概である。また、論文発表によりデータに命を与え続けた研究者達の功績も大きい。気象庁海洋環境解析センターの中野俊也センター長が実績をもって説く船舶観測と長期観測の重要性は今後も変わらない。データの蓄積が解析の精度を高め、さらなる継続の糧となる好循環が見えてくる。
◆海洋再生可能エネルギーの活用は海洋基本計画の重点施策のひとつであり、長崎県は待ったなしの追い風を背に先端を走っている。各省庁からの支援は上手く嚙み合う歯車となり、地域全体の活性化に繋がろうとしている。さらに長崎海洋産業クラスター形成推進協議会事務局長髙比良実氏は、「志」の大切さも成功への要素にしている。海と人との共生がここに見られる。
◆呉市の安芸灘諸島の豊島にある豊浜中学校の荒谷政俊校長は、身近にあっても海をよく知らない子ども達のために海洋教育に取り組み始めた。自然に恵まれた島での海の学びの第一歩はシーカヤック体験、藻塩づくりであった。呉の国立広島商船高等専門学校の実習船に乗るおまけまで付いた。専門家による指導の下で、楽しく安全に学ぶ子ども達の歓声が、海洋教育から住民による地域活性化へと地域の夢を紡いでいる。
◆『海洋白書2017』が刊行された。海の出来事は昨年多かった。ぜひご高覧いただきたい。 (窪川)

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