Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第148号(2006.10.05発行)

第148号(2006.10.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻教授)◆山形俊男

◆秋霖前線を強い台風が刺激して、各地から風水災害のニュースが続々と届いている。今年はなかなか秋らしい天候が続かない。こうした異常気象の予測に関する専門家会合が9月中旬に釜山のAPEC気候センターで開かれ、編集子も参加した。奇しくも台風13号が襲来して最終日のスケジュールは大混乱に陥ってしまった。

◆ハリケーンの台風への変身、記録破りの集中豪雨、車さえも舞い上げてしまうほどの竜巻の発生など、このところ極端な気象現象が増えている。温暖化が海の内部にじわじわ浸透し、海面からの蒸発が活発化していることが根底にあると考えている。インド洋熱帯域には強いダイポールモード現象が起きていて、オーストラリア西部やスマトラなどは深刻な旱魃に悩んでいる。一方で、太平洋熱帯域では中央部の水温が上昇して、エルニーニョに似た現象が起き始めた。強い台風の発生など異常気象はまだまだ続くと予想される。警戒を怠らないようにしたい。

◆さて、今号では海中の広域監視に極めて適切な技術である音響トモグラフィーについて、この分野の専門家の金子氏に解説していただいた。これは海水温や海流の情報をリアルタイムで取得する技術であり、シミュレーション技術と融合することで海の変動予測に貢献することができる。広大なEEZを居ながらにして管理できるシステムは大変魅力的である。

◆一方で、海は宇宙からも監視することができる。為石氏は衛星リモートセンシング技術の漁業への応用の専門家である。氏は詳細な衛星画像が海の暖水渦を捉えることから表層の魚群探査に有効であることを示す。より分解能の高いセンサーを備えた衛星からのデータを漁船の協同による現場データと総合することで、漁業資源を持続的に活用する管理漁業への道が見えてくる。

◆先に146号で海の砂漠化現象といわれる磯焼けへの対策について取り上げた。今号ではその原因について専門家の谷口氏に解説していただいた。海の温暖化現象が磯焼けの範囲をより高緯度域にまで広げているという。広大な<海の森林>の喪失は、結果的により多くの炭素の放出につながることから、温暖化をさらに加速する可能性がある。磯焼けの科学を深め、対策技術を確立することが望まれる。 (山形)

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