Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第131号(2006.01.20発行)

第131号(2006.01.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(総合地球環境学研究所教授)◆秋道智彌

◆冬の日本海。海の底をのぞいてみよう。冬の味覚ズワイガニが徘徊している。そうかとおもえば、昨年の夏から秋にかけて異常発生した大型クラゲの死体にヒトデが群れている。おもいもよらないのは、新潟県・直江津沖の海底から吹き出すメタンガスの巨大な柱の存在だ。松本良さんによると、ガスの柱は水深900mの海底から500-600mの高さに達するもので数十ケ所、広域にわたって確認された。メタンガスと水からなるメタンハイドレートは将来の新エネルギー資源と目されている。日本海でのメタンハイドレート発見は世界をリードする日本のエネルギー技術開発に大きな弾みとなることは間違いあるまい。

◆日本の南の海でも注目すべき動きがある。沖縄近海では1980年代を境に乱獲による底魚の減少傾向があり、漁民は生活困窮に陥った。それを救ったのがパヤオによるマグロ・カツオ釣り漁である。鹿熊信一郎さんはサンゴ礁やマングローブ地帯を漁場とする漁業から外洋漁業へ転換すべきであると提言されている。そして沖縄の経験は熱帯アジアや太平洋諸国における適正な資源利用に生かせるはずと主張する。パヤオのような集魚装置は海面に設置するものであり、場所を巡る紛争を内包している。たとえば、パヤオをめぐり沖縄県と宮崎県の漁民の間であったような紛争はインドネシアのマカッサル海峡でも発生している。適正な技術移転を成功させるうえでも、沖縄のシナリオを慎重に評価すべきだろう。

◆このように海の技術をどのように伝えるかは重要な問題をはらんでいる。中澤武さんは船員教育が現在、過渡期にあることを訴える。パヤオ発祥の地フィリピンはいまや世界で船員を供給する大国である。日本郵船がこの地に商船大学を設置するという。技術移転の民営化の国際版として画期的な動きと見るべきだ。世界をかけめぐる日本の海の技術に熱い思いをもつのは私だけではないだろう。(了)

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