Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第86号(2004.03.05発行)

第86号(2004.03.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆つい数日前まで、人と所を変えて新年会を繰り返しているつもりだったのが、ふと気がついてみればもう3月、時間はあっという間に過ぎて行く。浦島太郎の気分もかくや。今年はスギ花粉が圧倒的に少なく、暖冬でもあり、花粉症もちには快適な2月だった。このまま快適な春が続くことを願うばかり。「うららかな英虞周航や湾を出ず」(竹中碧水史)。

◆赤松オピニオンは、日本の誇った真珠養殖産業の現状を伝えて興味深い。編集子の時代の人間にとっては、御木本幸吉の英虞湾における真珠養殖は20世紀の日本を代表するサクセス・ストーリーの一つであった。アコヤ貝の感染症も狂牛病も、鯉ヘルペスも、皆々人間に無理やり働かされた動物たちの人間に対する復讐ではないかという指摘は、直感として大いに諾いうるもの。エコシステムとの調和という課題をうまく解決して、日本の真珠養殖業が衰退産業から脱し、新たな時代の付加価値の高い産業として甦る日が来ることを期待したい。

◆米澤オピニオンは、浮体式構造物の大規模実験であったメガフロートのその後を伝える。マリンパーク・くまの灘と清水港海釣り公園という具体的事例において、船を規制する海事局、港湾の施設を規制する港湾局、建築物を規制する住宅局が、それぞれの観点で見た場合にはそれなりに合理的な規制の体系を、いかに統合するかに腐心してきた経緯を踏まえて、最近の規制法令がどのように運用されているかを紹介する最新情報は有益なものである。

◆エトピリカ事務局長の高田氏の投稿は、本誌70号掲載の「サハリンの石油開発によって脅かされるクジラ」が取り上げた、サハリン石油ガス開発プロジェクトの環境問題に取り組むNPOの活動を紹介する。日本への環境影響が懸念されるこのプロジェクトには、公私を問わずさまざまな人・団体・組織が利害関係も持ち、強い関心を持たざるを得ない。本誌も今後多様な観点でこの問題をフォローして行きたい。

◆「国境をはるかに越えて迫り来る波あり春の岸辺を洗ふ」(館山一子)。(了)

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