Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第103号(2004.11.20発行)

第103号(2004.11.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者(総合地球環境学研究所教授)◆秋道智彌

◆東シナ海が赤く燃えている。中国領海にある春暁天然ガス田の炎は、同海域における中国の海洋開発の象徴となるものだろう。尖閣諸島では、赤い国旗が打ち振られていた。最近も原子力潜水艦が日本の領海を侵犯する事態が発生し、列島に衝撃をあたえた。

◆中国は、自国の大陸棚領有を主張している。思い起こせば、1949年、アメリカのトルーマン大統領は自国の大陸棚領有を宣言してそこに含まれる資源の独占を合法化しようとした。いわゆるトルーマン・ドクトリンである。アジアでは、中華人民共和国が成立した同年、フィリピンは自国の大陸棚における石油・天然ガス資源の採掘権を主張し、1969年には大陸棚宣言を採択した。台湾海峡をはさむ緊張や李承晩ライン問題も記憶に残る。

◆南シナ海の事情はさらに複雑である。中国は南シナ海全域の領有を歴史的な経緯から主張しているが、周辺のマレーシア、ヴェトナム、フィリピン、インドネシアなどとの間でさまざまな紛争を引き起こしてきた。

◆日本は200海里排他的経済水域を主張するなかで、中国と日本の中間線を海の「国境」とする案を提示してきた。大陸棚論はジオ・ポリティクスといえようが、海の環境や資源の持続的利用を目指す21世紀にはそぐわない前世紀の遺物である。

◆この10月に大阪で開催された本年度のコスモス国際賞(国際花と緑の博覧会記念協会)を受賞したメキシコのJ・カラビアスさんは、貧困の撲滅と環境の保全を両立させるさまざまなプログラムを国家プロジェクトとして実践し、見事に成功させた。彼女は、途上国は、環境を犠牲にする先進国型の経済発展の道を歩んではならないと主張する。

◆海の環境を守りながら開発を進めるためには、周辺国との合意や相互理解だけでなく、海への深い理解が必要だ。アジアの海の共存的利用を推進するため、日本は海洋環境に配慮した国際政治でヘゲモニーをもちたいが、いかがであろうか。(了)

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