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オーシャンニューズレター

第16号(2001.04.05発行)

第16号(2001.04.05 発行)

羽田空港再拡張構想

定期航空協会

首都圏の空港容量不足解消は日本経済再活性化のための重要なファクタ-である。現在検討がなされている首都圏第3空港は(1)近くて便利で(2)コストが安く(3)早くできる 羽田空港の再拡張 で対応すべきである。

首都圏の空港容量不足解消は国家的課題である

全国規模で人、物、情報の移動を活発化させるネットワーク型インフラを整備することは、わが国の経済・社会の再活性化の条件とさえといわれている。わが国のGDP総額の約4割を作り出す首都圏と地方を結ぶ航空ネットワ-クの強化もその一つである。

全国には93の公共用飛行場が設置され、そのジェット化率も65%を超えるなど、地方空港の整備は完成しつつある。一方、首都圏の空港容量不足は未だ解消されておらず、せっかく整備された地方空港が有効活用されない要因となっている。

首都圏の空港容量拡大に向けた動き

第7次空港整備五箇年計画(1996年~)

国の7次空整では、大都市圏における拠点空港の整備を最優先に推進する方針が示されており、首都圏新空港については概略以下のように述べられている。

「羽田空港は沖合展開事業が完成しても国内線で21世紀初頭には再びその能力が限界に達することが予測されるが、その再拡張は、航空機騒音問題及び東京港の港湾機能への影響を考慮すれば、極めて困難である。既存の飛行場も騒音問題等から拠点空港としての活用は期待できない。したがって首都圏における将来の航空需要に対応するため、海上を中心とした新たな拠点空港建設を前提として、総合的な調査検討を進める必要がある。」

首都圏第3空港調査検討会

国土交通省内に学識経験者等をメンバーとして設置され、2001年1月までに3回の会合が開催された。検討会では、2001年度末までに、複数候補地の抽出が行われる予定である。

私たちが提案する羽田空港再拡張計画

再拡張計画の前提条件

再拡張計画を実現性あるものとするため、以下の前提条件に基づいている。

  1. 港湾機能の確保:羽田空港東側には大型船が航行する第1航路があり、船高が60メートルの大型船の航行に支障のない位置に滑走路を設置すること。
  2. 河川機能の確保:羽田空港南側を流れる多摩川に支障を及ぼさないこと。
  3. 騒音問題への対応:飛行経路の設定に当たって、騒音基準を満足すること。
再拡張計画全体図(図1)

■図1羽田空港再拡張計画全体図

羽田空港再拡張構想上部羽田空港再拡張構想下部
出典:定期航空協会「羽田空港再拡張構想」

C滑走路の沖合950mの位置に、3,000mの平行滑走路1本を新設する。これにより、羽田空港の面積は現行の1,100haから1,395haに拡張される。新滑走路は第1航路を航行する船舶への影響を避けるため南側にスライドした位置に配置すると共に、7次空整で困難とされた案ではC滑走路との間隔が1,500mであったのに対し950mに抑え拡張面積を縮減した。ただ、羽田沖の水域が狭くなるため小型船舶の航行に迂回等の影響は生じる。

発着容量

現在は主に2本の滑走路をそれぞれ離陸専用・着陸専用に使用し、2002年7月以降の発着回数で56回/時間(27.5万回/年)となっている。再拡張後は、主に3本の滑走路を組み合わせて使用することで80回/時間(42.3万回/年)の発着が可能となる。旅客処理能力では年間1億人となり、21世紀中頃までの国内線需要に対応可能である。

羽田再拡張の優位点

  1. 高い利用者利便性:羽田は都心から約15kmに位置しアクセスも整備されており、これ以上に便利なアクセスを整備できる候補地は見あたらない。羽田を存続させつつ別の場所に新空港を建設する場合、路線・便が分散し旅客利便が損なわれると共に、空域の運用を慎重に検討しなければ十分な空港容量の確保は望めない。
  2. 短い建設期間:新空港の調査開始から開港までは15~20年かかるが、首都圏空港容量の逼迫度合いから見てそれ程の時間的猶予があるとは言い難い。羽田再拡張では新規に大規模タ-ミナルや道路を整備する必要がなく早期建設が可能である。
  3. 低廉な建設コスト:これまで莫大な事業費を投入して整備した羽田空港の既存諸施設を有効に活用できるため、短期間で空港容量を拡大することができるとともに、建設費の抑制が可能である。現行の空港整備財源の仕組みでは、用地の造成を含む事業費は、航空運賃を通して航空利用者への大きな負担となるため、極力事業費を圧縮する必要がある。関西国際空港では、その膨大な事業費のため着陸料や施設使用料が高額となっている。

現在検討中の第3空港は 羽田再拡張 で

21世紀中頃まで対応可能

現在検討が進められている首都圏第3空港としては「羽田再拡張」が最も有効であり、実現性も十分ある。羽田の再拡張と成田の本格的平行滑走路の完成により、21世紀中頃までの首都圏航空需要の伸びには十分対応できるものと考える。7次空整で「極めて困難」とされた羽田再拡張をタブー視することなく、現在の技術革新や社会状況に基づき、徹底的に再検証すべきである。様々な社会的利害調整も必要となろうが、十分な情報公開の下で広く議論がなされれば、必ずや「羽田再拡張」について国民的合意が形成されるものと確信する。

21世紀後半へ向けた長期的課題

羽田再拡張・成田の完全空港化が実現しても、21世紀後半を見据えた新空港(将来の第3空港)についての長期的検討は必要であろう。それには、首都圏の総合交通体系のあり方、アジアの航空需要の動向、超大型機・超音速機の有用性等を考慮すべきである。そして、羽田再拡張の実現により、その長期的検討のために必要な時間は十分確保されるのである。(了)

定期航空協会=航空輸送事業に関する諸般の調査、研究等を行い、わが国航空輸送事業の健全な発展を促進することを目的に平成3年12月6日に設立された団体(会長:兼子勲日本航空(株)代表取締役社長)。会員は日本航空(株)、全日本空輸(株)、(株)日本エアシステムなど12社。首都圏空港容量の拡大に向けた検討をはじめ、さまざまな課題と取り組んでいる。

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